論文紹介:モビコールによる小児便秘症患者と養育者の生活の質改善効果

今日は久しぶりに論文の内容の紹介をします。内容は、外来で2歳以上の便秘の患者さんに処方している、モビコールによる患者家族の生活の質の改善効果についてです。

 

ポリエチレングリコール製剤(モビコール)は、便中の水分量を増加させ、軟化させるとともに、便の容積を増やし、それにより大腸の蠕動運動を活発化して排便を促す薬です。欧米では治療の第1選択薬でしたが、日本で販売されたのは2018年からです。

 

以前にも記事にしましたが、効果があるうえに、副作用は従来より使われてきた酸化マグネシウムとほぼ同等です。処方していて効果も実感しております。

 

teammanabe.hatenablog.com

 

先日も1歳児で、複数の薬剤を使用しても便秘が改善せず、毎週のように当院を受診し、浣腸・摘便で対応していた患者さんがいました。お母様も疲れ切っており、その子も浣腸がわかって大泣きしており、見ている方も苦しくなるような状況でした。しかし、2歳の誕生日と同時にモビコールを処方したら、服用開始1週間で悩みが解決しました。お母さんの表情も晴れ晴れとしており、嬉しくなりました。

 

前置きが長くなりましたが、以下、論文の紹介です。

 

雑誌:日本小児科学会

タイトル:ポリエチレングリコール製剤による小児便秘症患者と養育者のQOL改善効果

筆頭著者:藤村友美 (国立成育医療センター消化器科

 

【どのような患者さんを対象にしたの?】

2~14歳の便秘症の患者とその養育者

【何を調べたの?】

ポリエチレングリコール製剤導入前後のQOL (quality of life; 生活の質) を自己記入式アンケート調査により調べた

・患児QOL調査票

:6~14歳は、本人の保護者が記入。2~5歳では養育者のみが記入

項目は、1)精神面 (排便がないことへの心配や苛立ち), 2)生活面:運動, 勉強や睡眠への支障, 3) 社会面 (友達と遊ぶ際の心配), 4) 身体面 (腹痛の有無, 食欲や食事への支障), 5)

薬物の効果実感

・養育者QOL調査票:

項目は1)社会的な不都合(家族とのすれ違い, 仕事への影響), 2) 生活習慣サポートの負担 (排便の促し, 通院の負担) 3) 感情コントロール (苛立ちや悲しみ, 疲れやすさ) 4) こどもへの心配 (治療内容・効果への不安, 副作用への不安,こどもの学業や社会性への不安) 

・排便状況、症状、服用方法など

【主な結果】

患児QOL調査票

養育者:全ての項目で有意に改善

患児:「治療効果の実感」以外は有意に改善

養育者QOL調査票

すべての項目で有意に改善

治療効果

主治医が治療効果を感じたのは25/26例 (96%)

2剤以上で治療を行っていた症例は65%→21%へ減少

正常な排便例が2/26例→24/26例へ増加 (正常な排便=週3回以上and Bristol4~5) 

リンゴジュースやカルピスで服用していた例が多かった

 

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【結論】

モビコールは便秘症の児と保護者の生活の質を改善する