当院では、スギ花粉症とダニによる通年性アレルギー性鼻炎の方を対象に舌下免疫療法を行っております。
この治療に関する論文を随時紹介していきたいと思います。
今回紹介するのは、
タイトル:小児通年性アレルギー性鼻炎に対するダニ舌下免疫療法における成人と比較した治療1年後の効果と安全性
筆頭著者:湯田厚司
雑誌:アレルギー2021;70: 186-194.
です。
ざっくりとしたポイント
・小児・成人ともに治療1年後に症状は改善 ( 約70%は改善or軽度改善)
・小児・成人ともに薬物スコアも改善 (=治療薬の減少)
・小児・成人ともに副反応は60%弱であったが重篤な副反応はなし
・小児と成人で治療効果・安全性に差はなかった。
✎研究の概要
・対象:ミティキュアRダニ舌下錠による免疫療法を継続している症例
・評価項目:治療開始から1年後の症状と開始1年間の副反応
症状については、
a) 日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票 (JRQLQ No.1)による症状スコア
調査記入日の最近1~2週間の間で最もひどかった症状を患者自身が記載
内容は以下のリンクと同様です(このリンクでは花粉症となっていますが内容は同じ)
b) 視覚的アナログ尺度 (Visual analog scale: VAS)
調査記入日より1週間のくしゃみ、鼻汁、鼻閉、眼のかゆみについて患者自身が記載
VASとは? 日本ペインクリニック学会
c) 併用薬物スコア
抗ヒスタミン薬/抗ロイコトリエン薬 1点
ステロイド点鼻/ブロイドエフェドリン・抗ヒスタミン薬配合薬 2点
d) 重症度分類と重症度改善
a)のJRQLRのくしゃみ, 鼻汁, 鼻閉の3症状の中でもっとも悪いものを重症度とした
最重症 (スコア4), 重症(スコア3), 中等症(スコア2), 軽症(スコア1), 全て無症状(スコア0)
1年後に重症度が2段階改善あるいは無症状となった例を改善, 1段階改善を軽度改善
e)副反応の確認
✎結果
(1) 対象例
218例のうち20例が脱落 (そのうち副反応を理由の脱落は3例)
(2) 症状の改善
成人がグレイの線、小児が黒い点線です。小児・成人ともに治療開始から1年後にくしゃみ, 鼻汁, 鼻閉, 眼のかゆみの各症状が改善しています。治療前後の変化は、小児と成人で差がありませんでした。
(3) 薬物スコア
小児・成人ともに治療開始1年後に薬物スコアが有意に低下しております
(1部の患者さんは治療薬を減らせたということです)
(4) 重症度改善
成人・小児ともに治療開始1年後の時点で約40%の患者さんが明らかな改善を認めています。なお、小児と成人で治療効果に差はありませんでした。
(5) 副反応
・小児では70/121 (57.9%)、成人では45/77 (58.4%)に副反応をみとめましたが、処置を要する例はありませんでした。
・小児と成人で副反応の出現率に差はありませんでした。
・副反応による一時的なアレルゲンの減量を要したのは、小児11例 (9.1%)と
成人9例 (11.7%)でした
・副反応の出現時期は治療開始から1ヶ月以内が多く、維持期で落ち着いた時期の副反応が小児6例 (5%)と成人2例 (2.6%)でした。
・副反応の多くは治療2ヶ月以内に消失し、2ヶ月を超えて持続した副反応は、小児7例 (5.8%, 最長6ヶ月), 成人6例 (7.8%, 最長6ヶ月)でした。
✎結論
ダニの舌下免疫療法は小児と成人で効果と安全性に差がなく、ともに1年後に症状の改善がみとめられた
✎感想
患者さんに治療効果と安全性を説明できる貴重な報告です。ただし、治療効果はプラセボ効果も含まれているのかなと思います。アレルギー疾患はプラセボ効果が出やすいのです。まあ、病は気からというし、それでも良いかもしれないのですが・・・。
後はある程度の重症例に絞った解析も知りたかったですね。そうすれば患者さんの状況により具体的な説明ができると思います。