成人の片頭痛治療&最近のトピックス

時々お母様より相談いただくことが多いので成人の治療についても紹介します。

【急性期の治療】

アセトアミノフェンイブプロフェンなどNSAIDで効果が乏しければトリプタンを使用します。なお、エルゴタミン製剤は以前は急性期治療の中心でしたが、トリプタン出現後は使われなくなりました。

まずは、トリプタンを詳しく紹介します。

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a.スマトリプタン半減期が約2時間と短いため、服用後2時間で効果が不十分な時は

         もう1錠追加できる

         点鼻や皮下注射も開発(嘔吐で内服困難例には有用)

b.ゾルミトリプタン:効果出現はスマトリプタンより遅いが、代謝産物も片頭痛発作改善の作用を有するため、効果の持続時間は長い・口腔内速溶錠もある。

C.エレトリプタン:最高血中濃度到達が1~1.2時間で速やかで、半減期も3.2~3.9時間と長い(=効果が長く持続する)

d.リザトリプタン:最高血中濃度到達が1時間

e.ナラトリプタン半減期が5.5時間と長い。しかし、最高血中濃度到達が2.6時間と長く速効性に欠ける

まずは、どれかを選択し、頭痛発作に対する効果やトリプタン内服後の再発の有無について評価していきます。

 

研究段階の治療薬として、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)をターゲットにした薬剤が開発されており、効果が期待されています。

 

【予防方法】

片頭痛発作が月に2回以上ある場合に考慮します。予防治療の効果判定には少なくとも2ヶ月を要するので、有害事象がなければ少なくとも3~6ヶ月は継続します。その後、コントロールが良好となったら漸減します。カルシウム拮抗薬, β遮断薬, 抗てんかん薬, 抗うつ薬漢方薬などの選択肢があります。

 なお、当院の片頭痛もちの事務・看護師スタッフは五苓散という漢方薬に効果を感じているようです。

 

【虚血性脳発作との関連】

45歳未満の前兆 (目の前がチカチカしたりぼやけたりする)のある片頭痛 (migraine with aura: MA)の女性患者では、虚血性脳卒中のリスクが2倍、喫煙や経口避妊薬使用で7~9倍です。片頭痛の頻度と虚血性脳卒中発作の関連では、50歳未満のMAの女性患者では片頭痛発作が年12回をこえると、虚血性脳卒中のリスクが2~10倍増大しました。こうしたことから、米国での脳卒中予防のためのガイドラインでは、1) MAの女性は禁煙が強く推奨される 2) 経口避妊薬代替療法を考慮する (英国では避妊目的での恵子避妊薬の使用は禁忌)3) 片頭痛の頻度を減らす治療は脳卒中のリスクを減らすためには合理的である, 4) 脳卒中予防においては卵円孔開存の閉鎖の適応はない、と記載されています。

なお、前兆のない片頭痛 (migraine without aura: MO)では、喫煙や経口避妊薬によるリスクは増加しません。

 

参考文献

1) 菊井 祥, 他. 【頭痛に関する最近の話題】片頭痛, ペインクリニック. 2021;42:169-181.

2) 清水 利彦. 【頭痛・めまい すぐ役に立つ鑑別診断と根拠に基づいた治療】治療 実地医家のための治療の知識 片頭痛の治療 日常の臨床現場での使用薬から研究段階の治療薬まで. 2020;37:587-592.