論文紹介~ポリエチレングリコール製剤で治療した小児慢性便秘症患者へのアンケート

当院では、便秘症の治療も積極的に行っております。便秘は軽く考えられがちですが、排便時に痛みと不安で苦しむ我が子を見るのは保護者としてはとてもつらいです。

約1年半前にモビコールRというポリエチレングリコール製剤という種類の薬が日本でも販売されました。もともと欧米では第一選択として使われていた薬です。実際に、複数の治療薬を使用にもかかわらず、週1回しか排便がなく苦しんでいた娘(当時6歳)に使ってみたところ、数日で排便をみとめ、その後も安定しました。その経験から、保険適応のある2歳以上のお子様に積極的に使用しておりますが、大部分の方が著明な改善を認めております。

 

最新の日本小児科学会雑誌にこの治療薬を使用した患者さんへのアンケート調査が論文報告されたので紹介します。

須田絢子, 他. ポリエチレングリコール製剤で治療した小児完成便秘症患者へのアンケート. 日本小児科学会雑誌 2020; 124 (6): 967-974

 

対象は、2019年3~7月に信州上田医療センターを受診し、慢性便秘症の診断でモビコールを処方された20例。年齢中央値は4.5歳で、80%が他剤 (45%が複数の薬剤)を使用しているにもかかわらず、60%の方が週2回以下の排便で、便の性状がBristolスケールでtype1~3でした。

 

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便性状スケール

この20例に、これまでの治療を中止し、モビコールを開始し、4週間経過を追いました。(ただし、ピコスルファートナトリウムやグリセリン浣腸は使用可)

 治療開始後2例は味が許容できず中止となり、1例は2週目以降の受診が途切れました。したがって、18例は2週間、17例は4週間治療を継続しています。

 毎日便の出ている例が、治療開始前 3/18 (16.7%)→投与後2週 12/18 (66.6%)→投与後4週 15/17 (88.3%)となりました。便の性状も、理想的な便とされるType4or5の例は、治療前4/18 (22.2%)→投与後2週 17/18例 (94.4%)→投与後4週 (100%)となりました。

 副作用は投与後2週で下痢を2例 (11.1%)にみとめましたが、減量することで改善しました。

患者満足度は、非常に満足41.2%, 満足58.8% , 他の薬剤と変わりないor良かった 0%でした。

 

お子様が排便時につらそうにしていたら、たかが便秘と思わず、ご相談ください。