新型コロナワクチン接種後のアナフィラキシーについて、厚労省が発表した8/22までのデータを紹介します。
期間の延長が前回からの変更点になります。
前回記事は7/11までのデータです
また、解説も追記しております。
ファイザー社製ワクチンは、2021年2月17日~8月22日の期間に、医療機関よりアナフィラキシーとして報告されたのは、100万回接種あたり21回でした (約4.8万回に1回) 厳密にアナフィラキシーの定義を満たすのは、100万回接種あたり4回でした(約25万回に1回)
医療機関からは軽度のアレルギー症状も、アナフィラキシとして広く報告されていたのかなと思います。なお、厳密なアナフィラキシーの定義とは、ブライトン分類1~3になります。ブライトン分類とは? https://www.pmda.go.jp/files/000240175.pdf
なお、モデルナ社製ワクチンは、2021年5月21日~8月22日の期間に、医療機関よりアナフィラキシーとして報告されたのは、100万回接種あたり17回(約5.9万回に1回) で、厳密にアナフィラキシーの定義を満たすのは、100万回接種あたり1.5回でした
注意) 両者の接種本数が大幅に異なるので、これだけでは、モデルナ社製ワクチンの方がアナフィラキシーを起こさないとはいえません。
アレルギー体質があるだけでは接種を避ける必要はありませんが、GINA (Global Initiative for Asthma) によると、ポリエチレングリコール (PEG) に対して重いアレルギー反応を起こしたことがある場合は推奨しておりません。
ファイザー社とモデルナ社製のmRNAワクチンは、ワクチンの有効成分であるmRNAが封入されている脂質ナノ分子の水溶性を保持するためにPEGが重要な役割を持っています。今回のアナフィラキシーは、PEGが原因である可能性が高いと考えられています。
PEGは医薬品や一部のワクチン、化粧品などに含まれております。小児科で比較的よく使う、便秘の治療薬のモビコールRはポリエチレングリコール製剤ですね。大腸内視鏡検査の前処置用も腸管洗浄剤の主成分にもなっています。さらに、薬物動態の安定化のため種々の注射薬に添加されています。
これまで報告された、ファイザー社製ワクチンによりアナフィラキシー例の94%, モデルナ社製の全例が女性でした。
このことは、化粧品による経皮感作の可能性も否定できません。
接種の判断の一助となるよう、引き続き新しい情報を更新していきたいと思います。
参考文献
浅野浩一郎, 他. 【新型コロナウイルスワクチン接種にともなう重度の過敏症(アナフィラキシー等)の管理・診断・治療】, アレルギー; 70: 215-223.