一般集団 において生後0~3か月の保湿薬が塗布が2歳時点でのアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを予防するか?

 今日は、一般集団 (アトピー性皮膚炎の家族歴のあるハイリスク例に限定しな い)において、生後0~3か月の保湿薬が塗布が2歳時点でのアトピー性皮膚炎や食物アレルギーを予防するか?を検討した論文を紹介したいと思います。

 

 論文は、

タイトル:Short-term skin problems in infants aged 0-3 months affect food allergies or atopic dermatitis until 2 years of age, among infants of the general population

筆頭著者:Kaori Yonezawa

雑誌:Allergy Asthma Clin Immunol. 2019 Nov 26;15:74

 

まずはざっくりと結果から

・一般集団において、生後3か月までの保湿薬塗布は、2歳までのアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症予防にはならない

アトピー性皮膚炎の発症には、アトピー性皮膚炎の家族歴, 男児, 生後3か月時点まで の4日以上の重度のオムツ皮膚炎が関与

・食物アレルギーの発症には、アトピー性皮膚炎の家族歴, 生後3か月時点までの4日以上の重度の皮膚トラブル, 生後6か月以降の離乳食の開始、が関与

 

概要は以下です。興味のある方はぜひおつきあいください😃

 

対象は、

・35週以上で出生した日齢1~3の新生児

・一般集団 (アトピー性皮膚炎の家族歴のあるハイリスク例に限定しない)

です。 

著者等は、以前に、200名をランダムに

生後3か月まで、介入群:2日に1回の沐浴+毎日の保湿(1回/日以上) と 対象:毎日の沐浴+保湿なし、に分けて、生後3か月時点での経過を比較しました。

 その結果、保湿スキンケアは、皮膚のバリア機能を高め、新生児のおむつ皮膚炎や生後3か月までの皮膚トラブルを予防する効果があることを明らかにしました。

 今回は、その追跡研究で、郵送によるアンケート調査により、2歳までのアトピー性皮膚炎や食物アレルギーの発症について調査しております。

 

主要な結果ですが、

(1) 2歳までの食物アレルギーの発症は、介入群 (生後3か月までに保湿薬を塗布)は、

11/67 (16.4%), 対照群 (保湿薬塗布なし)11/88 (12.5%) で差はありませんでした

 

文献の表より作成

(2) 2歳時点でのアトピー性皮膚炎の発症は、介入群14/67(20.9%), 対照群 14/88 (15.9%)で差はありませんでした。

文献の表をもとに作成

少し残念な結果になってしまいました。

では、どのようなことが発症に関連しているのでしょうか?

まずは、食物アレルギーから

食物アレルギーの発症には、アトピー性皮膚炎の家族歴, 生後3か月時点までの4日以上の重度の皮膚トラブル, 生後6か月以降の離乳食の開始、が関与しておりました。

例えば、アトピー性皮膚炎の場合は、家族歴があると、家族歴のない場合と比較して発症リスクが4.59倍高い, 100回解析したうちの95回が1.66倍~12.72倍の範囲におさまる(95%信頼区間) というようにみます。重度の皮膚トラブル(湿疹)があると、4日以上でもリスクがあがるのは驚きですね。

文献より抜粋し引用

アトピー性皮膚炎については、アトピー性皮膚炎の発症には、アトピー性皮膚炎の家族歴, 男児, 生後3か月時点まで の4日以上の重度のオムツ皮膚炎が関与しておりました。

オムツ皮膚炎がアトピー性皮膚炎の発症の原因となっているかは分かりません。重度のオムツ皮膚炎になる=皮膚のバリア機能が弱いことを示唆しているだけかもしれません。

文献より抜粋し引用

 

今回の結果より、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎の発症予防目的で、全ての児に生後からの保湿薬を塗布していくのは、あまり意義がなさそうです。アトピー性皮膚炎のある児や男児に対象を絞った方がよいかもしれません。短期間 (4日以上) の重度の湿疹でも食物アレルギー発症のリスクになるのは少しショッキングなデータですね。悪化したら早期にステロイド軟膏を塗布し介入していくのが大事だと思います。