乳児のアトピー性皮膚炎への早期のステロイド軟膏治療は食物アレルギーの発症を減らす

 今日は、乳児の湿疹を早期にコントロールすることにより、その後、2歳時点での食物アレルギーの発症を減少させたという報告を紹介します。

 論文は、

タイトル:Earier aggresive treatment to shorten the duration of eczema in infants resulted in fewer food allergies at 2 years of age  

筆頭著者:Yumiko Miyaji 

雑誌:J Allergy Clin Immunol Pract, 1721-1724, 2020  

 内容ですが、

 2011年4月~2014年12月の期間に成育医療センターをアトピー性皮膚炎を理由に受診した乳児177名が対象となりました。そのうち、142名が生後22~24か月の食物アレルギーの評価をされています。この142名はステロイド軟膏を中心とした積極的な治療により約1週間で湿疹を軽快させたのですが、湿疹発症から4か月以内に治療を開始したearly treatment群75名湿疹発症から4か月以降に治療を開始したdelayed treatment群に分けられました。

 この両群の患者さんの背景は以下になります。当然ですが、介入の遅かった群の方が月齢は高かったです。SCORADは、湿疹の重症度を診察により評価したスコアですが、

EAry treatent群の方が高値でした。湿疹の重症度が高い人ほど早期に受診し、成育医療センターに紹介されるからですね。TARCという血液検査によるアトピー性皮膚炎の重症度のマーカーも同様の傾向でした。

両群の患者さんの背景。文献より主要な部分を抜粋し引用

さて、結果ですが、2歳時点での食物アレルギーは、Eary treatment群 (発症から4か月以内に対応した群)が19/75 (25.3%)に対し、Delay treatment群 (発症から4か月以降に対応した群)は31名 (46.3%)でした。Eary treatment群の方が、アトピー性皮膚炎の重症度が高かったにもかかわらず、食物アレルギーの発症率は低かったのです。

文献より改変し引用

さらに、湿疹発症からの介入時期と食物アレルギー (FA) の発症をみると、治療開始までの期間が長引くほど、FAの発症率が高くなるのが下図より分かります。

文献より引用

それで、当院では、乳児の湿疹に対して、早期よりステロイド軟膏を用いて積極的に対応させていただいております