今年の目標の1つとして、小児が接種するワクチンの解説とYou tube動画を整備していきたいと思います。
まずは、ワクチンデビューの赤ちゃんが最初に接種するワクチンの1つHib (ヒブ) ワクチンについて解説します。
Hibとはインフルエンザ菌の中の莢膜を有するタイプ のうちのb型です。インフルエンザ菌には莢膜のないタイプと莢膜のあるタイプ (a~f型) があります。
莢膜のないインフルエンザ菌は毒力が弱く血流に入ることなく気道の粘膜上皮に感染します。中耳炎, 肺炎, 副鼻腔炎の主要な原因菌となります。
莢膜を有する菌は毒力が強く鼻咽頭の粘膜上皮を貫通し直接血管内に侵入します。なかでも、血清型B型 (Hib)は毒力が強く、髄膜炎, 関節炎, 喉頭蓋炎などの重症な感染症を引き起こします。
特に、Hibが脳を覆う髄膜という場所に侵入し炎症を起こす、Hib髄膜炎は、2007~2013年の発症例において、約0.6%死亡し、12%が後遺症を残すというおそろしい疾患でした。私が若い頃は、熱性けいれんの重責状態で搬送されてきたお子様がいたら、必ず細菌性の髄膜炎の可能性を頭に入れながら対応しておりました。
こうしたことから、Hibワクチンは2013年4月より定期接種化されました。
次の図は、5歳未満, 人口10万人あたりにおける、Hibワクチンの公費化前後のHibによる侵襲性(重症) 感染症の罹患率の変化を示しています。
髄膜炎は2008~2010年は10万人当たり7.7人だったのが、定期接種化されて以降は激減しております。
今回は以上になります。赤ちゃんにワクチンを接種する意義の理解の一助となれば幸いです。
【参考文献】
1.菅 秀, チャイルドヘルス21,330-333,2018
2.Suga S, vaccine 2018, 36:5678-5684