お子様の力で治ったんです~必要最小限の処方のカゼ診療を目指して

今はカゼ症状で受診するお子様が比較的多いです。気候の変化に加え、運動会や遠足などイベント疲れも関係しているのかもしれません。 

最近、カゼ診療について以下の本を読み感銘を受けました。少し、極端かな?と思う部分もありますが、見習わなければと思った部分もありました。当院でのカゼ診療の現状と今後の目標についてお話していきたいと思います。

子どもの風邪/西村龍夫 Honya Club.com PayPayモール店 - 通販 - PayPayモール

 

外来でよく「処方された咳止めが効いて治った」という保護者の方が話してくださることがあるのですが、カゼ薬には症状が少し緩和されるかも?ぐらいの効果しかありません。つまり、かぜ薬の力ではなく、本人の力でカゼを治した、ということになります。

 

ここからは、各薬について解説していきたいと思います。

抗生物質 (抗菌薬)

細菌には効果がありますが、ウイルスには効果がありませんカゼの大部分(90%以上)はウイルスが原因です。したがって、発熱した児にいきなり抗生物質は不適切な対応になります。耐性菌の誘導, 下痢などの副作用のリスクがありかえって体にとって有害となってしまう可能性があります。また、薬の服用が苦手なお子様の場合、ご家庭において大変な負担となります。私が抗菌薬を処方するのは、溶連菌感染症, 発熱が続き血液検査で細菌感染症が疑われた場合 (発熱の原因が明らかな場合のみ)や副鼻腔炎と考えた場合ぐらいです。当院ではこの数年で処方をだいぶ減らしたと思います。

ACイラストよりダウンロード



鼻汁を止めるお薬

感冒による鼻汁を止めるお薬 (例.ケトチフェン,シプロヘプタジン塩酸塩水和物:ペリア記クチンR, d-クロルフェニラミンマレイン酸塩: ポララミンRなど) 、鼻汁の水分をとばすことで、鼻汁を減らしますが、眠気, 口渇をみとめたり、かえって鼻閉となってしまうことがあります。また、熱性痙攣を起こした場合、痙攣時間が長引く可能性も指摘されております。こうしたことから、最近は処方されない流れにはなってきております.

当院の処方も、この数年で90%以上減らしてきていると思います。

 

・咳止め

咳止め(チペピジンヒベンズ酸塩, アスベリンR) は有効でないという報告もここ最近では、見られております(論文は後日、後日紹介させていただきます)。咳止めは、50年以上使われており、安全性への懸念は少ないものの、眠気や食欲不などの副作用が見られることもありますし、お子様によっては服用が負担となる可能性があります。当院では、この咳止めの処方はなかなか減らせておりません。これは今後の課題です。

 

では、外来ではどうして患者さんが咳止めはすごく効果あると感じているのでしょうか?例えば、咳が出たときに、病院を受診し、咳止めが処方されました。3日で軽快した場合、お子様の力で治ったのではなく、薬の効果で治ったと思ってしまいます。次に受診した時も同様のことが起こると、この誤解が強化されていってしまい、咳には咳止めが著効、という意識が強くなっていきます。

い今の状況からいきなり咳止めゼロ処方を目指していくのは、混乱があると思いますので、根拠を示しつつ、かつ患者さんに選択していただきつつ咳止めの処方を徐々に減らして行ければと思います。次の5年の目標です。

 

カゼ薬の処方を減らしていくとなると、なぜ医療機関を受診するの?と思う方もいらっしゃるかもしれません。受診の主要な目的は、お子様の状態の評価 (私は3歳未満は耳を含めて診察します), ホームケアのアドバイス (登園可能時期も含めて)となります。

また、症状が長引くなら喘息や副鼻腔炎を疑いアプローチしていきます。

 

専門医療だけなく、カゼ診療も、一流のアプローチを目指して取り組んで生きたいと思います。