【トレンド】新生児のビタミンK投与

タイトルをみて、「え、うちの子ビタミンKを産科入院時や1ヶ月健診の時に飲んだんだけど」と思うかもしれませんが、まあまあ最後まで読んでくださいな。

 

ビタミンKは、肝臓での凝固因子という血を止める働きの物質を作るのに必要です。ビタミンKは、ビタミンK1 (外から摂取)ビタミンK2(体内で作る)に分かれます。ビタミンK1は、納豆や緑黄色野菜に多く含まれます。ビタミンK2腸内細菌により作られます。

新生児はビタミンKが不足しやすいんですね。

理由は3つあります。1つ目は、 ビタミンKが胎盤を通過しにくいからです。つまり、出生時の備蓄が少ない状態になります。2つ目は、母乳中のビタミンKが少ないからです。

なお、人工乳は母乳の3倍、ビタミンKが含まれます。最後は、新生児の腸管は生後数日は無菌状態であり、ビタミンKが作られないからです。

ビタミンKが不足すると、どうなるのでしょうか?血液を固める凝固因子が作られなくなり、頭や腸から出血する可能性があります。それで、生まれた赤ちゃんにはビタミンKを何回か飲ませているのです。

 

さて、ビタミンKはどのタイミングで飲ませているのでしょうか?

国内では、産科診療ガイドライン2020では、哺乳確立時 (主に日齢1)、産科退院時

1ヶ月健診時3回法が推奨されています。その一方で、欧米では、生後3ヶ月まで1週間に1回、計13回服用する3ヶ月法が推奨されています。

では、国内の現状はいかがでしょうか。2018年の日本小児科学会の調査によると、3回法が56%, 3ヶ月法が22%, その他が22%と、色々な方法が混在しておりました。

近隣の病院では、海老名総合病院は3ヶ月法で対応しているようです。

では、ビタミンK不足により出血をきたす赤ちゃんはどれぐらいいるのでしょうか?

国内の小児科施設を対象とした調査によると、回答率は34%だったのですが、2015~2017年の3年間で、出血をきたした児が、47施設から78例報告されました。

そのうち、43施設47症例が2次調査に進んだのですが、頭蓋内出血は13例でした。

出血は生後21日~生後4ヶ月の間に起こっており、不明例を除いた12例中11例が胆道系疾患, 不明例を除いた12例中12例がビタミンKは3回投与でした。不明例を除く、11例中10例が母乳栄養児でした。

頭蓋内出血例についてまとめると、

1) ビタミンKは頻度はまれですが、後遺症を残すリスクがあります

2) 胆道系疾患を有する例が大部分

3) 発症例のビタミンKの投与は全例3回法で母乳栄養が大部分

 

胆道系疾患とは、主に胆道閉鎖症です。

肝臓と十二指腸をつなぐ、胆道(図の緑色)の部分が閉鎖された状態です。こうなると、腸からビタミンKを吸収できなくなり、ビタミンKが不足状態となってしまいます。

これに対しては、早期発見が重要です。その方法は、皆様の母子手帳内にある便色カードです。胆道閉鎖があると、便が白くなってきます。便の色が1~3だったら、慎重に対応ということになります。このカードは、胆道閉鎖症の早期のためにあるんですね。

 

後は、母乳栄養、あるいは母乳栄養が半分以上の混合栄養児の場合は、ビタミンKを3ヶ月法で投与しておくことで、ビタミンK不足による頭蓋内出血をほぼゼロにできるのではないでしょうか?

現在、周産期関連の学会が、ビタミンKの3ヶ月投与を推奨する方向で動いているかと思います。

当院では、生後2ヶ月のワクチンをご予約いただいた方には、相場が1,000~3,000円のところ、無料でビタミンKを配布しております。よかったら、生後1ヶ月になる前に、体重計測やワクチン・その他のご相談に気軽にいらしてくださいね。