今日は、ADHD (注意欠如・多動症)児へのインチュニブという治療薬の使用経験をまとめた論文を紹介します。
論文は、
タイトル:注意欠如・多動症児へのguanfcineの治療経験
- guanfacine至適投与量の予測法についての考察-
筆頭著者:小山博史
雑誌:小児の精神と神経, 62 (4), 2023, 323-337
まずは、インチュニブについてのざっくりとした説明です。
最初は、血圧を下げる薬として1980年に承認されたのですが、効果が乏しく、2005年に販売中止となっております。しかし、副作用として、集中力の増加が報告されたので、2001年にADHD症状改善薬として治験が開始され、2009年に米国, 2015年にEU, 2017年に日本で承認されております。
インチュニブ (GXR)に副作用としての眠気があります。著者らは、GXRの投与を開始した48例について、その効果と傾眠を伴わない至適投与量について検討しています。
【研究の対象】
2017~2018年にADHDと診断した6歳≧~<18歳152例
残り96名のうち、服薬を希望したのが93名
最終的に、GXRを服用したのは47例で、併用薬あり24名, GXR単独23例
【治療効果】
ADHD-RS、その他で評価しております。
1点以上の低下と家族・学校担任より改善した旨の情報があれば「有効」
※ADHD-RSとは
【結果】
(1) 全体での有効例と無効例の比較
有効が37/47 (79%)でした。ADHD-RSスコアは、有効例は、多動・衝動性スコアが6.6±5.8点、不注意スコアが6.6±5.8点低下しておりました。臨床をやっている立場からすると、かなりの低下です。副作用として眠気があるものの、不注意症状が改善するのみ興味深いです。
他の薬剤無効例にも効果がみられ、ストラテラ無効例6/8例(75%)、コンサータ無効7/11例(64%) に有効でした。
コンサータを不眠・頭痛・興奮で服用できなかった5例のうち、4例は、インチュニブ併用により前日の副作用は改善しました。
インチュニブ有効例の中で起床困難が認められた12例のうち8例 (67%)は、朝の起床の改善をみとめました。また、感覚過敏をみとめていた17例中8例 (47%)が改善をみとめました。
(2) インチュニブ (GXR) の最終投与量に影響する要因
MPSAという指標の感覚スコアが高いほどGXR投与量は少ないという結果でした
しかし、コンサータの併用例を加えると、その効果は打ち消されました。
まとめ
・インチュニブ有効例は、多動だけでなく不注意症状も改善
・インチュニブの至適投与量は感覚過敏の強さと負の相関関係があった
・インチュニブとコンサータは併用するとお互いの副作用を軽減する可能性がある
・インチュニブにより、感覚過敏や起床困難を改善する可能性がある