低亜鉛血症はアプローチする価値があるかも?

今日は、亜鉛の投与により不登校が改善したよという症例報告を読んだので共有させていただきます。

 

論文は、

タイトル:低亜鉛血症の改善とともに不登校が改善した1例

筆頭著者:小沢浩

雑誌:小児の精神と神経 64(3):251–256,2024

 

ざっくり概要をまとめると、13歳男児。基礎に自閉スペクトラム症と注意欠如・多動症

があり、不登校状態でうつ状態と不安障害をみとめていました。血中亜鉛濃度が59 μg/dL(基準値80-130μg/dL)と低値であったため、酢酸亜鉛水和物を開始したところ、3か月後には学校に週3日, 5か月後には毎日通えるようになり、14か月後にうつ状態の指標であるバールソン児童用抑うつ性尺度と不安障害の指標であるスペンス児童用不安尺度も改善しましたという報告です。

 

(解説)

🐓亜鉛とは

亜鉛は体の中で重要な働きをする必須の微量元素で、300種類以上の酵素や多くの遺伝子の調整に関わっています。不足すると、味覚の異常や食欲低下、傷が治りにくくなるなどの「老化」の症状だけでなく、成長の遅れや免疫異常, 皮膚トラブル, 神経や発達の問題など、さまざまな病態に関連していることが知られています

亜鉛は、脳や神経の働きに関わる物質(セロトニングルタミン酸ドーパミン、GABAなど)を助ける重要な役割を持っています。これらの物質は、気分を安定させたり、集中力を高めたり、リラックスしたりするのに必要な神経伝達物質です。

 

🐓亜鉛に関する主な報告
1.学齢期の神経発達症の血中亜鉛濃度は低値である

   井之上寿美,ら(2022):神経発達症児における血清亜鉛値の検討.脳と発達54(5) :356–358

2.6~ 11歳の子どもに亜鉛製剤を135日間投与した結果,うつ状態,不安状態

 およびソーシャルスキルが改善した

DiGirolamo AM,  et al. (2010) :Randomized trial of the effect of zinc supplementation
on the mental health of school-age children inGuatemala. Am j Clin Nutr 92(5) : 1241–1250
3.30名の若年女性に亜鉛を10週間投与し,怒りや反抗行動の減少およびうつ状態が改善したが,緊張,不安,倦怠感は変化がなかった

Sawada T, Yokoi K (2010) : Effect of zinc supplementationon mood states in young women: a pilot study.Eur J Clin Nutr 64(3) : 331–333

4.亜鉛は,抗うつ作用に関与する

Katarzyna M (2015) : Zinc in the Glutamatergic theory of depression. Curr Neuropharmacol 13(4) : 505–513

 

🐓亜鉛の副作用

高値になると銅の吸収が低下し,それによる貧血,顆粒球減少がある

 

🐓感想
専門機関で環境調整や心理的介入をしているのでそちらが効果をみとめた可能性がある。しかし、比較的安全と思われる薬剤なので、血中濃度が高くなり過ぎないように注意しつつ試してみる価値があると思われます。低亜鉛状態への介入は専門医療機関でなくても可能なので今後も注目していきたい

 

 

CHATGPTにより生成