お母さんからの質問「生後6ヶ月から日本脳炎ワクチンを接種したほうが良いでしょうか?」

 先日、予防接種の時に、お母様より「生後6ヶ月から日本脳炎ワクチンを接種したほうが良いでしょうか?」という質問をいただきました。日本脳炎ワクチンの問診票に3歳未満、0.25mlと記載してあるのをみて、調べてくださったようです。

 回答としては、感染リスクの高い地域では、生後6ヶ月からの接種を検討しましょう。ただし、流行期を過ぎた、晩秋~冬にあわてて接種する必要はありません、です。

 以下、解説していきます。

 

まず、標準的な日本脳炎ワクチンの接種スケジュールですが、3歳から開始します。

 

日本脳炎の国内の発症状況は、ほぼ年間10例を下回っており、中高年が中心でした。

しかし、小児例の発症も散発的に見られており、ワクチン接種開始前の3歳以下の児の発症例もありました。2015年に千葉県で0歳児が発症し、その症例を機に、日本小児科学会より、2016年2月に、日本脳炎流行地域に渡航・滞在する小児、最近日本脳炎患者が発生した地域・ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6か月から日本脳炎ワクチンの接種を開始することが推奨れました。

日本脳炎罹患リスクの高い者に対する生後6か月からの日本脳炎ワクチンの推奨について|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY (jpeds.or.jp)

 

 

さて、日本脳炎の感染リスクの高い地域とはどこでしょうか?

まずは、世界を見てみましょう。アジアが中心ですね。

 

続いて、国内に目を向けてみましょう。下図は、豚の日本脳炎ウイルスの抗体保有

(=感染率)を調べています。見づらくてすみません😣 白:未測定、ブルー:0%、

橙色:1~49%, 赤:50~79%、茶色:80%以上となっております。少なくとも、茶色の地域(できれば赤い地域も)は生後6ヶ月から接種したほうが良いかもしれません。

JE_2021map-1 (niid.go.jp)

 

後は、効果についてです。疑問点としては、

1) 3歳未満に接種すると0.25mlと1/2量ですが、免疫はつくのでしょうか?

2) 生後6ヶ月でⅠ期初回を接種すると、4歳のⅠ期追加まで期間があいてしまいますが

 大丈夫でしょうか?

 

まずは、1) 3歳未満に接種すると0.25mlと1/2量ですが、免疫はつくのでしょうか?

について。成人のデータですが、半量接種でも十分に中和抗体 がつくことが第Ⅲ相試験で示されています。 (Miyazaki C, et al, Clin Vaccine Immunol 21, 188-195, 2014)

2) 生後6ヶ月でⅠ期初回を接種すると、4歳のⅠ期追加まで期間があいてしまいますが

大丈夫でしょうか? について。少し、話しは異なるかもしれませんが、第1~第2期の間隔が6~10年でも中和抗体は維持されるというデータがあるようです。
 (宮崎, 小児内科49, 2017-11)

 

以上より、お母様のご質問への回答は、回答としては、「感染リスクの高い地域では、生後6ヶ月からの接種を検討しましょう。ただし、流行期を過ぎた、晩秋~冬にあわてて接種する必要はありません」となります。 

ずっと神奈川県にいるのであれば良いのですが、豚ちゃんの感染率の高い他県に転居の予定があったり、千葉県や茨城県の山地でキャンプするような場合は、接種しておいた方が無難かなと思います。