今日は、お母様からの質問「日本脳炎ワクチン生後6ヶ月からの接種で抗体がつきますか?」に回答します。
回答:生後6ヶ月からの早期接種でも抗体を十分に獲得できます。ただし、3回の接種を終えることが重要です。リスクの高い地域では、未接種児の感染が少なくないので早期接種をおすすめします
現在、日本脳炎ワクチンは、最近日本脳炎患者が発生した地域・ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6か月から日本脳炎ワクチンの接種を開始することが推奨されております (標準スケジュールは3歳~)
しかし、生後6ヶ月は免疫が未発達で、0.25mlの接種 (3歳より接種を開始する時の1/2量)で十分な抗体を獲得できるがどうかを検討した報告が少ないのが現状でした。
最近、この点について検討した論文が報告されたので、共有させていただきます。
私が重要と判断した部分だけ抜粋していることご了承お願い致します。
論文タイトル:日本脳炎ワクチン早期接種推奨後の抗体価について
筆頭著者:追立のり子
雑誌:日本公衆衛生雑誌, 2023; 70, 243-251.
https://www.jsph.jp/docs/magazine/2023/04/4-p243.pdf
📝研究の方法は
・2018年10月~2020年3月の期間に千葉県の旭中央病院に入院した生後6M~8歳児
・接種群89名, 未接種群65名に分け、血清中の中和抗体, ワクチンの接種回数, 接種量, 接種後経過日数について検討
📝研究の結果は
・ワクチンの接種量と抗体価 (早期接種 vs 標準接種)
ワクチンを2回接種同士で比較すると、早期接種 (生後6ヶ月~, 0.25ml/回) は27例中
抗体陰性 (10倍未満) を2例 (8.7%)にみとめ、抗体80倍未満を8例 (29.6%)にみとめた。
それに対し、標準接種 (3歳~, 0.5ml/回) では全例で抗体は陽性でかつ80倍以上であった。3回接種の場合は、早期接種・標準接種いずれもすべての児の抗体が80倍以上
であった。
・接種後の経過日数と抗体価
接種後の経過日数が長くなると抗体価が減衰する傾向は認められなかった。
ただし、早期接種 (生後6ヶ月~)は最長で接種後499日までしか追えていない。
・未接種児の抗体
65例中6例 (9.5%)が陽性で、そのうち5例は3歳未満であった。
📖まとめ
・生後6ヶ月からの早期接種でも抗体を十分に獲得できる。ただし、3回の接種を終える
ことが重要
・接種後の経過日数による抗体価の減衰は認められなかったが、0.25ml接種児においてより長期の検討 (Ⅱ期接種が9歳で妥当であるかどうか)が必要である。
・未接種児の約10%が不顕性感染を起こしており、ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6か月から接種を開始する必要がある。