新型コロナウイルス感染症 味覚・嗅覚の障害について

プロ野球阪神タイガーズの藤浪選手の新型コロナウイルス感染の報道を機に

感染患者さんに、嗅覚・味覚障害を認めることがあることが、一般の方にも知られるようになりました。

しかし、どれぐらいの割合に認めるのか、その程度などの詳細はあまり知られておりません。今回、英語論文を2編読みましたので、ざっくりした結果ではありますが、

報告させていただきます。

 

論文1. Andrea Giacomelli, et al, Self-reported Olfactory and Taste Disorders in SARS-CoV-2 Patients: A Cross-Sectional Study. Clin Infect Dis. 2020 Mar 26;ciaa330. doi: 10.1093/cid/ciaa330. Online ahead of print.

【場所】イタリア

【対象】入院を要した成人のSARS-CoV-2患者88名 

【方法】問診

【結果】59名が回答 (未回答の29例の大部分が回答可能な病状でなかった)

11名(18.6%)に嗅覚・味覚障害, 20名(33.9%)にいずれかを認めました。この20名のうち12名 (60%)は入院前より嗅覚・味覚障害をみとめていました。女性は53%に認められたのに対し、男性は25%でした。嗅覚あるいは味覚障害を認めた例の年齢中央値が56歳に対し、認めなかった例は66歳でした。

【言えること】入院を要した成人患者(中等症)の34%に味覚・嗅覚障害をみとめた。特に、若い先人女性に認めやすい。

 

次の論文は、自宅療養した軽症例を対象に、より詳細に検討しています。

 

論文2. Giacomo Spinato et al, Alterations in Smell or Taste in Mildly Symptomatic Outpatients With SARS-CoV-2 Infection.JAMA. 2020 Apr 22; doi: 10.1001/jama.2020.6771.

【場所】イタリア

【対象】軽症 (自宅療養)の成人のSARS-CoV-2患者374名

【方法】検査した5,6日後に電話問診

【結果】202名 (71.4%)が回答し、年齢中央値は56歳でした。(中央値とは真ん中の数値のことです。例えば、1,3,9,15,30なら「9」です。もし、平均だったら(1+3+9+15+30)÷5=11.6となります)。130/202名 (64.4%)に嗅覚あるいは味覚障害を認め、その程度は、75/130名(58%)が重度でした。嗅覚あるいは味覚異常の発現時期は、初発症状のものが24/202例(11.9%)、その他症状と同時に発現したものが46/202例(22.8%)、その他の症状の後に発現したものが54/202(26.7%)でした。嗅覚あるいは味覚異常が唯一の症状だったものは6/202例(3.0%)でした。男性が55.7%に見られたのに対し、女性は72.4%に見られました。

 

【言えること】入院を要さない成人の軽症患者の約60%に味覚・嗅覚障害がみられ、その程度は比較的重い。味覚・嗅覚障害だけの方は少なく、大部分は発熱や咳など他の症状も伴うが、初期は味覚・嗅覚障害のみだけだった方も存在した。味覚・嗅覚障害は、女性の方に多く見られる。

 

まとめ

嗅覚・味覚障害はとても重要な所見ですね。小児例における味覚・嗅覚障害の報告はまだありませんが、小児は家族内感染が大部分であることが知られおります。保護者の方の経過を確認することで、新型コロナ感染が疑わしいかどうかの判断の一助となると思います。