新型コロナウイルス感染症後の小児多系統炎症性症候群について

今日は、新型コロナウイルス感染症後の小児多系統炎症性症候群 (MIS-C/PIMS-TS) 

という病態についてお話しします。

※MIS-C:Multisystem inflammatory syndrome in children

※PIMS-TS:Pediatric infllamatory syndrome temporally associated with SARS-COV2

 

MIS-C/PIMS-TSとは、

✓ 新型コロナに感染した6~51日後 (概ね2~6週後) に発症します。

✓  年長児に好発 (平均年齢9.3歳)し、発熱, 腹部症状 (腹痛, 嘔吐, 下痢),  循環器症状 (血圧低下・心機能低下など)発疹, 眼の充血, 神経症状などをみとめます。

✓消化器症状 (腹痛, 嘔吐, 下痢)を87%, 神経症状36% (頭痛・めまいは20%, 傾眠・無気力・興奮・精神状態の変化は10%) , 低血圧60%, 心機能低下51%, 心臓の冠動脈障害は21%, 発疹59%, 眼の充血57%に認めます。

 

✓ 発症機序は新型コロナウイルス直接感染よりも、その後の免疫反応によるものが考えられます。

✓したがって、MIS-Cを発症した時の新型コロナのPCR陽性率は33~39%と低く、抗体陽性率は54~60%と高い、です。

 

新型コロナウイルス感染症軽症あるいは無症状でも発症する可能性があります

✓その頻度は海外の報告では0.1%未満とされています。

✓しかし、70%がICU管理を要します。

大部分は後遺症なく回復しますが、死亡率は1~2%と推定されています。

✓アフリカ, ヒスパニック, 南アジア系で報告は多いが東アジアではまとまった報告はな

 く、日本国内での発症頻度は不明です。

 

日本小児科学会誌の2021年11月号に掲載されていた症例報告を紹介します。

タイトル:川崎病に準じて治療したCOVID-19関連小児多系統炎症性症候群の年長児例

筆頭著者:工藤絵里子

雑誌:日本小児科学会誌, 125; 1574-1580, 2021

概要は以下です。

症例は11歳男児。49日前に味覚障害を発症し、46日前にPCR検査で新型コロナ陽性。

発熱はなく、味覚障害は4日で軽快した。(第1病日) 鼻汁、めまいをみとめ、近医を受診したが、感冒薬を処方され、経過観察となった。その日の夕方に発熱 (38.8度), 腹部の発疹をみとめた。(第2病日) 発疹は全身に拡大し、嘔吐を2回みとめた。解熱剤を使用した解熱時に支離滅裂な言動を一過性にみとめた。(第3病日) 眼球結膜充血をみとめ 市中病院へ紹介。(第4病日) 眼の充血, 口唇紅潮, 四肢末端の発赤・腫脹 をみとめた。

入院後も発熱が遷延し、一過性の軽度の血圧低下・心機能低下や冠動脈障害をみとめたが、川崎病に準じた治療でICU管理を要さずに軽快した。以上

 

国内でのMIS-Cの発症頻度は不明ですが、小児の感染者数の増加に伴う、発症者数の動向は注意が必要と思います。

 

参考資料

1.小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)診療コンセンサスステートメント 20210916_mis-c_c_s.pdf (jpeds.or.jp)

2.Zimmermann P, et al. , Should children be vaccinated against COVID-19?. Arch Dis Child
. 2022 Mar;107(3):e1.