耳垢について

 外来では、特に2歳未満で発熱や鼻汁をみとめるお子様は、中耳炎の合併を考え、鼓膜の診察もしております。しかし、耳垢で鼓膜がしっかりと見えないことも少なくなく、「耳垢で鼓膜まではみえなかったです」や「見える範囲では大丈夫そうです」などとお答えせざるをえず、もどかしさを感じることがあります。

 今日は、耳垢についてです。 

1.耳垢とは?

 耳垢は、外耳道上皮からの落屑物や塵芥などが皮脂腺や耳垢腺の分泌物と混合して生じた物で、乾燥した耳垢 (乾性耳垢) と湿った耳垢 (湿性耳垢)に分けられます。

 湿性耳垢はヨーロッパ・アフリカの人種に多く (黒人99.5%, 白人90%) , 乾性耳垢はアジア人種に多いです。国内でも地域差があり、北海道・沖縄には湿性耳垢が多いです。

 同じアポクリン腺 (皮膚の一部にしかない特殊な汗腺) が多く存在する腋窩において、腋臭が多い人は湿性耳垢が多いと言われています。また、湿性耳垢と乳がんの罹患が関連するとした報告もあります。

2.耳垢の働き

 外耳道や鼓膜に対する、細菌の定着・増殖などに対する防御として重要な働きがあります。また、酸性による殺菌作用や脂質による皮膚表面の保護・潤滑作用があります。

3.耳垢はどうすればよいのか?

 ある程度の耳垢はむしろ必要といえます。しかし、耳垢が多くたまると、外耳道が閉塞し、難聴・耳鳴りを生じることもあります。診察時にこれは耳鼻科にお願いしたほうがいいなと思った場合は、お伝えしますのでご安心ください。

 家庭での耳掃除は、特に乳幼児は、鼓膜損傷のリスクや逆に耳垢を奥に押し込んでしまうこともあるので、2週間に1回ほど、耳の入り口部にとどめておくのが無難です。

 

参考文献

1.岩崎聡.複雑耳垢, ENTONI, 159:19-24, 2013.  

2.形浦昭克, 他. 耳垢の性状・機能・遺伝, JOHNS,14:1039-1045, 1998.  

 

ACイラストより引用