先月、お母様よりいただいた質問です。
この機会に耳瘻孔についてまとめてみました。
1.これは何でしょうか?
先天性耳瘻孔(じろうこう)と思われます。瘻孔から瘻管というトンネルが下に伸びてい
る場合もあります (図1)。
2.何が原因でしょうか?
まだ明確ではありませんが、耳の形ができる過程で皮膚の一部が中に入り込んだだめにできたと考えられています。家族内発生もあり遺伝性も指摘されています。
3.これは珍しいのでしょうか?
日本では0.6~2.8%と報告されており、まれな病気ではありません。女性に多いとする報告がありますが、女性の方が美容を気にして来院する機会が多いからかもしれません。
4.耳のどこにできやすいのでしょうか?
左右差はありません。左右両方に発生するのが12~50%と報告されています。前耳輪部、耳前部が80~90%を占め、次いで耳輪脚基部が多いとされています (図2-3)。
5どうしたらよいでしょうか?
小さい穴が奥深いと、そこで垢がたまり、悪臭を伴う白色の分泌物が出る、感染を起こして赤く腫れあがることもあります。感染を1度も起こしたことのない無症候性のものは経過観察でよいです。しかし、感染を繰り返す場合、瘻孔からの臭い分泌物で悩んでいる場合も摘出術の適応になります。その際は、耳鼻科へ紹介いたします。
6.手術は全身麻酔ですか?
未就学児や協力が得られない児の場合は、全身麻酔です。小学生以上であれば局所麻酔で行うのが可能ですが、部位によっては、全身麻酔での手術が必要です。詳しくは手術をする耳鼻科の先生にご確認ください。
参考文献
- 大橋菜都子,他. 耳瘻孔414症例の検討. 小児科臨床2002; 55: 2141-44.
- 物部寛子.小児の外耳疾患. MB ENT 2020,242:1-5.
- 有本友季子. 耳瘻孔. 小児科診療 2019,55:1025-1029.