日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2022年8月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。
以下、学会誌の内容を一般の方向けに簡潔にまとめました。
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.114
No. 115 消毒剤誤飲によるエタノール中毒, 日児誌 126: 1211-1213, 2022
【事故の概要】
5歳女児 (体重18Kg)。保育園の昼寝時間中に、速乾性手指消毒剤(プッシュ式,スプレータイプ,エタノール濃度 約80vol%)を手に取り、舐めてみることを10回ほど繰り返した後、徐々に目が回り始めた。13時頃、保育士が、児がうずくまっているのを発見。「目がグルグル回る、気持ち悪い」と訴え、体動困難となったため、保護者にお迎えを要請した。16時頃、医療機関Aを受診した際に、傾眠傾向で呼びかけに反応しなくなり、別の医療機関へ搬送されたされ、入院。22時より意識レベルが徐々に改善し、翌日に退院。血中エタノール濃度が高値でエタノール中毒と診断された。
【解説】
・エタノール濃度80vol%は溶液100 mL中にエタノール80 mL含むことを意味します。
(本製品、1.25mlでエタノール1mlを含む)
・成人ではエタノール約1 mL/kgの経口摂取で軽症から中等症の中毒症状が出現します が,小児では約0.5 mL/kgで重篤な中毒症状が出現すると考えられています。本児の場合は、18×0.5=9ml (本製品だと、9×1.25=11.25ml相当) で重篤な症状が出現しえます。
・本製品は1プッシュ約3 mLであり,4プッシュ程度の消毒剤を誤飲すると重篤な中毒 症状が出現する計算となります。
・消費者庁より,消毒剤の誤飲や目に入った事故が報告されています
Vol.583 消毒剤・除菌剤の取扱いに留意しましょう。誤飲や眼に入る事故の発生が続いています! | 消費者庁
・日本中毒センターによると,除菌剤や消毒剤が眼に入ったことに関する相談件数が急増しています。子どもが自ら触ったことによる事故が半数を占めますが,残りは,大人が噴射方向を誤ったり,自動噴霧により子どもの眼に入ってしまった事故です。海外では重篤な事例も報告されています。
https://www.j-poison-ic.jp/wordpress/wp-content/uploads/eyeexposure202102_2.pdf
【対応策】
自宅では小さいお子様の手に届かないところに置くのが無難と思います。外では、大人に対して周囲にこどもがいないか確認することを、こどもに対しては、消毒は1プッシュのみ、舐めてはいけないということを、ポスターを用いて注意喚起していくことかなと思います。