日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2023年1月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。
以下、学会誌の内容を一般の方向けに簡潔にまとめました。
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.120
まずは、概要ですが、
もうすぐ9歳の男児。体重は26Kg。初めて自販機でエナジードリンク (500 mL, カフェイン210 mg つまり42mg/100ml) を購入し全量を摂取しました。その1時間半後に嘔気が出現し、持続するため約7時間後に病院を緊急受診しました。嘔吐はなく経口摂取が可能であったため、自宅で経過観察を指示され、翌日には軽快しております。
✎カフェインについて
カフェインは摂取後30~60分で最高血中濃度に到達し,肝臓で代謝されます。血中半減期は成人では3~7時間,小児では3~14時間とされています。過剰摂取した場合は小児では症状が長引く可能性があります.過剰のカフェインを摂取すると,繰り返す嘔吐や動悸,場合によってはけいれんなどが見られ,死に至ることもあり注意が必要です.
✎カフェインの中毒量
・小児では、体重1 kgあたり
20 mg程度:頻回嘔吐
80~100mg:重篤な中毒症状
・カナダでは、4~6歳:最大45 mg/日,7~9歳:最大62.5 mg/日,10~12歳:最大85 mg/日までにするように提言されています.
✎飲料に含まれるカフェインの量
・100 g当たりのカフェイン含有量は,コーヒー60 mg,ウーロン茶20 mg,玄米茶10 mg,紅茶30 mgといった目安量が示されています。なお、日本で販売されているエナジードリンク中のカフェイン量は,100 mLあたり10~170 mgであり,商品によって幅があるようです。
✎本児について
本例のエナジードリンクは100 mLあたり42 mg 1本210 mg(500 mL)であり,本児にとっては8 mg/kgのカフェインを摂取したことになります.これは前述の中毒量 (体重あたり20mg)より少ないですが,前述したカナダ保健省におけるカフェイン摂取制限最大量 (7~9歳では62.5mg/日)の3倍を超えています。カフェイン感受性には個人差があること (実はアメリカ人はカフェインに弱く、向こうの珈琲はノンカフェインが多い)や,子どもはカフェインに対する感受性が高いことから,本例でみられた嘔気はカフェイン中毒によるものであった可能性があります。
特に受験生のお子様はカフェインを摂取し過ぎないように注意しましょう。
早く寝て、いつもより早く起きるのも1つの方法です。