フッ素入り子ども用歯磨剤の誤食に注意!

日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2022年7月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。

以下、学会誌の内容を一般の方向けに簡潔にまとめました。

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.113

フッ素入り子ども用歯磨剤の誤食による急性フッ素中毒疑い, 日児誌126: 1098-1101, 2022

0113.pdf (jpeds.or.jp)

(発生状況と経過)

1歳5ヶ月の男児。洗面台(高さ約80 cm)におかれていた歯磨剤(フッ素濃度950 ppm/対象年齢記載は無し)を誤食。午前6時半頃に自宅で嘔吐が出現し,吐物の中に歯磨剤も少量あった.その後も嘔吐が2回あり,午前7時半ごろ(事故発生から約2時間後)に外来受診となった.入院し、点滴のうえ経過観察。翌日に軽快退院。歯磨剤の誤食量は,残量から考慮すると30 g程度と考えられた.

(解説)

・フッ素は①耐酸性・結晶性の向上,②抗菌・抗酵素作用,③再石灰化の促成の3点か らう蝕予防になる

一度に大量のフッ化物を摂取すると,急性毒性が発現する可能性がある

・推定中毒量はフッ素量として2~5 mg/kgで悪心,嘔吐,下痢などの消化器症状が出現し,5~10 mg/kgで不整脈などが起こる可能性があり,致死量は32~64 mg/kg

体重が10Kgの場合は20mgの摂取で消化器症状が出現しうる。

・摂取フッ化物量(mg)はフッ素濃度(%)×使用量(g)×10(フッ素濃度(%)=ppm×0.0001)で表される.本児の場合、950×30×10×0.0001=28.5mgと推定されるので、紹介症状の出現は起こりうる量であった。

・消化器症状は摂取したフッ化物と胃酸とが結合してフッ化水素が形成され胃粘膜を刺激することにより出現する.

いずれの歯磨剤も1本誤食したとしても致死量には至らないと推定される.

(誤食時の対応)

誤食直後にカルシウムを多く含む牛乳あるいはアイスクリームなどを経口投与する

 (カルシフッ化物とくっつき、吸収されるのを防いでくれる)

 

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