新型コロナ抗原検査キット抽出液の誤飲に注意

日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2022年8月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。

以下、学会誌の内容を一般の方向けに簡潔にまとめました。

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.114

新型コロナウイルス抗原検査キット抽出液の誤飲, 日児誌 126: 1208-1210, 2022

 

【事故の概要】

4歳男児。母の職場で新型コロナウイルス感染者が発生したため、職場から配布された抗原検査キット4セットを持ち、帰宅した。午前11時過ぎに男児を車で迎えに行き、ダッシュボードの上にキットを置いていた。自宅に到着後、母が車から先に降りて、児が車の中で1人になる時間帯があった。その後、母がキットの抽出液のないことに気づき、児に確認したところ、「喉が渇いていた、フタを開けたらリンゴの臭いがした」と4本の抽出液をすべて飲みほしたことが発覚した (誤飲は11時半過ぎ)。午後0時20分に無症状であったが医療期間を受診した。医師の調査により、抽出液中のアジ化ナトリウムが問題であることが分かったが、抽出液中の濃度や量は不明であった。

胃洗浄のうえ、経過観察目的で入院となったが、その後の経過に問題なく、翌日退院となった。(後に、抽出液中のアジ化ナトリウムは、0.1%以下の濃度で量は0.3mlと問題のない量であったことが判明)

 

【解説】

アジ化ナトリウムとは:検査キットには防腐剤として含まれている。1950年頃より降圧薬として用いられていたが、1998年に新潟市で10人の集団中毒事件が発生し、以降、

毒物および劇物取締法の毒物に指定された。(ただし,本キットのように、0.1%以下の濃度は政令による毒物に該当しない).

・アジ化ナトリウムを経口摂取すると、頭痛,悪心,嘔吐,めまい,胸部不快感,息切れ,血圧低下などが引き起こされる。

・ヒト経口での毒性量は,最小中毒量:5~10 mg,最小致死量:700~800 mg(13~15 mg/kg)と報告されている.

・吸入や経皮によっても速やかに吸収される。接触すると粘膜や皮膚に化学熱傷を引き  起こす。→抽出液が目に入った時の影響は不明であり、早急に水で洗い流す必要がある

・本児について:抽出液中のアジ化ナトリウム濃度は0.1%以下で、抽出液も0.3ml/本で、4本飲んでもアジ化ナトリウムは0.2mg以下である、中毒症状が出ることはない。

・ただし、検査キットの種類によっては、抽出液ボトル→検体抽出容器に分注する物もあり、ボトルを誤飲した場合は中毒症状が出現するリスクがある。

・2022年3月の日本中毒センターからの報告によると、新型コロナウイルス抗原検査キット関連の事故報告は29件で、約70%が検査キットの抽出液や保存液の誤飲, 約30%は

使用時の事故で、使用手順を誤り、抽出液をしみこませた綿棒を鼻に入れるなどの事例があったようです。

https://www.j-poison-ic.jp/wordpress/wp-content/uploads/COVIDtest20220329.pdf

 

 

新型コロナの抗原検査キットは薬局やネットで手軽に手に入るようになり身近なものとなりました。小さなお子様が誤飲せぬよう管理には気をつけましょう