アロマディフューザー液の誤嚥に注意

日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2021年9月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。

以下、学会誌の内容を簡潔にまとめました。

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.106 アロマディフューザーの液を誤嚥したことによる化学性肺炎 日児誌2021: 125:1367-70.

0106.pdf (jpeds.or.jp)

<事故の概要>

症例は1歳児。午前8時頃、母が姉 (3歳) の着替えをさせている途中で、本児がトイレへ向かうのを見ていた。1分後に姉の着替えが終わり、本児の様子を見にトイレに向かった。本児は咳をしながら泣いていた。アロマディフューザーにさしてあった棒と容器が洗面台のシンクに全て落ちており、残りの液体がほとんどない状態であった。床やシンクにも液体はなかった。本児に嘔気をみとめ、口からアロマの香りがしたため8時半に医療機関Aを受診したが、経過観察を指示され帰宅した。帰宅後、嘔吐2回認め、咳き込みと40度の発熱を認めたためAを再受診し、解熱薬座剤を処方され帰宅した。翌日もAを再受診したところ、水分摂取不良で血液検査で炎症反応が高値であったため医療機関Bへ紹介された。受診時、多呼吸とレントゲン上肺炎が見られ、抗生物質ステロイドの点滴で入院加療され軽快した。

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文献より

(解説) 

 (1) アロマディフューザーは、一般的にリードディフューザーと呼ばれる製品であり、ビンの中に芳香剤成分等が入っており、木の棒 (リード) を通して香りを拡散する仕組みになっている、電源や火が不要であり、100円ショップなどで市販されている安価なものもある。

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文献より

(2) 国民生活センターのネットワークに、乳幼児が液体芳香剤を誤飲した事故は約10年間で31件寄せられていた。 

液体芳香剤の誤飲事故等に注意!−乳幼児がリードディフューザーの液を誤飲して入院する事故が発生−(商品テスト結果)_国民生活センター

 

(3) 液体芳香剤は柑橘系など香りのするものがあり、乳幼児の気を引きやすい可能性がある。

 

(4) 本ケースのアロマディフューザーの液体成分は55%がジプロピレングリコールメチルエーテル, 30%がイオン交換水, 15%が香料であった。精油成分は入っていなかった。

プロピレングリコールメチルエーテルは、第3類石油系の有機化合物で、自動車の流体、クリーナー、塗料、線量、インキ、ワックス、接着剤、防虫剤、化粧品溶媒などに使用されている。

 

(5) 石油系の有機化合物は、吸入や誤飲した場合、容易に体内に吸収される他、刺激により化学性肺炎を発症する可能性がある。催吐は禁忌である。また、意識障害をきたすこともある。

本症例は肺炎を起こし、画像検査で、肺に空洞病変をみとめたが、さいわい3ヶ月後には改善していた。

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文献を改編。左が発症6日目、右が発症6ヶ月後 

以上

 

アロマディフューザーはお子様が小さいうちは購入しないのが良さそうですね。