今日は、妊娠中・授乳中の抗菌薬についてお話します。
まず、ざっくりしたポイントですが、
・本当に薬剤の治療が必要な場合に服用する のが前提
・薬剤の使用に関係なく、15%が流産、3~5%が先天異常を自然発生することを知っておきましょう。
・妊娠中は、外来で主に処方する、ペニシリン系, セフェム系, マクロライド系, ニューキノロン系は、妊娠初期の使用により、先天異常発生リスクは大きく上昇しません。
当院の外来で使用することはほぼありませんが、テトラサイクリン系やアミノグリコシド系の妊娠中の使用は注意が必要です。
・授乳中は、抗菌薬は、母乳を介して乳児が摂取する薬剤量は少なく、服用してもさしつかえありません、
・薬剤に関して不安なことがあれば妊娠と薬情報センターへ相談を
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まずは、妊娠と抗菌薬について
外来で主に処方する、ペニシリン系, セフェム系, マクロライド系, ニューキノロン系とは、妊娠初期の使用により、先天異常発生リスクは大きく上昇しません。
薬剤の使用に関係なく、15%が流産、3~5%が先天異常を自然発生するというところで、安全である、という記載ではなく、使用により、先天異常発生リスクは大きく上昇しないという記載となっています。
ニューキノロン系 (クラビットRなど) は、動物実験で胎児に発育抑制、骨格異変の出現が認められたことより、添付文書には、ヒトでの安全性が確立していないから妊娠中は使用しないことと記載されている。ヒトでの疫学研究では、妊娠初期 (~13週6日)に服用した母親の約130例において、コントロール群と比較して先天異常の発生リスクは上昇しなかったという報告があります。
(Lobstein R, et al, Pregnancy outcome following gestational exposure to fluoroquinolones: a multicenter prospective controlled study: Antimicrob Agents Chemother. 1998 Jun;42(6):1336-9.)
授乳と抗菌薬について
添付文書では、動物やヒトで乳汁中への薬剤の移行が確認されると、授乳を避けるよう記載されてしまう場合が多いです。実際にどのぐらいの量が移行し、乳児が摂取するかまでを考慮したものとはなっていません。
以下の2つの指標が大事です。
1.タンパク結合率
高いものは乳汁中への移行が限られます
2.RID (相対的乳児投与量)
母乳を介して乳児が摂取する薬剤量/ 乳児の治療量×100
10%未満であれば、児に影響が及ぶ用量を摂取することにはならない
どの抗菌薬もRIDが10%未満ですね。したがって、必要な状況であれば授乳中のお母様にも処方します。
参考文献
八鍬奈穂, 患者へのリスクコミュニケーションの実際から頻用薬-抗菌薬・解熱鎮痛薬. 日本医師会雑誌 2019, 148 (2): 229-233.