日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2023年9月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。
以下、学会誌の内容を一般の方向けに簡潔にまとめました。
日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.128
電子レンジで加熱した飲食物による喉頭熱傷, 日児誌 128: 1243-45, 2023
【事故の概要】
0歳9ヶ月児。100gのお粥を電子レンジで500~600W, 1分間温めた。母が、さじで少量をすくい、触れてちょうどよいことを確認した後に児に食べさせた。その直後に、児は咳き込み、啼泣したが、すぐに落ち着いたので残りのお粥をあげた。翌日の午前1時に、
吸気時に喘鳴をみとめたため、午前3時頃に救急要請し医療機関を受診した。ファイバーで喉頭蓋の著明な発赤・浮腫と水疱形成をみとめたため、喉頭熱傷と診断された。
【こどもの生活環境改善委員会からのコメント】
1.通常は、高温の飲食物を嚥下しようとすると,反射的に吐き出されてしまうため,熱傷の範囲は口腔や中咽頭に限局し,喉頭まで及ぶことは稀である。乳幼児の場合、反射的な嚥下により、喉頭に熱傷が及ぶこともある
2.外側は熱くないが内側がとても熱い食物を十分に咀嚼せずに飲み込んだと考えられる。代表例としてたこ焼きや春巻き,小籠包などが挙げられる。
本田圭司,鎌田知子,田崎彰久,他.緊急気道確保を要したたこ焼きによる咽喉頭熱傷例.耳鼻臨床 2012;105:681-685.
3.電子レンジは加熱する対象によって、中心部と外側に温度差を作り出すことがある。
4.予防策として、高出力での加熱は飲食物が予期せぬ高温となる可能性があるため控える, 温度勾配が発生しうることを理解し,可能な食品はよくかき混ぜる,乳幼児に与える前に養育者が摂取して温度を確認する.