先日は帯状疱疹について解説させていただきました。今日は、帯状疱疹の発症と後遺症としての神経痛を予防する、帯状疱疹ワクチンについて解説いたします。
帯状疱疹ワクチンには、生ワクチンとサブユニットワクチン の2種類があります。
💉生ワクチンについて
【効果】
水痘生ワクチンを高齢者に接種すると、水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫が増強することが知られています。米国のデータですが、平均3.12年間の追跡調査では、帯状疱疹の累積発症率は、ワクチン群がプラセボ群に対して51.3%減少、帯状疱疹補神経痛は、ワクチン群がプラセボ群よりも66.5%減少1)しておりました。
【接種の歴史】
・米国では、帯状疱疹ワクチン (ゾスタバックス:Zostavax R) が2006年5月より免疫能が正常な60歳以上を対象に接種が推奨されました。2011年3月からは50歳以上に引き下げられました。
・わが国では、2016年3月より、小児の水痘予防で使用していた乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」が50歳以上の帯状疱疹予防としての適応が認められました。
【注意点⚠】
・妊婦さんや免疫抑制状態の方は接種できません
・ワクチンの効果は8年で消失します2)
・60歳代接種群の方が70歳代接種群より効果が高い3)
💉サブユニットワクチン (シングリックスR)
遺伝子組み換え技術で作製した水痘帯状疱疹ウイルスの糖蛋白E (ウイルス感染細胞の表面に存在している蛋白)とアジュバンド (ワクチン効果を増強する物質) で構成されています。日本では2018年3月に承認されました。
【接種方法】
2回接種。筋肉注射。2回目は初回より2ヶ月後です。
【効果】
国際共同研究 (日本を含む18カ国)で、平均3.2年間の観察中、ワクチンによる帯状疱疹阻止効果は97.2%でした4)。
また、年齢による効果の差もみられませんでした。
【副反応】
局所的な反応としては、接種部位の疼痛 (78%), 発赤 (38%), 腫脹 (26%)でした。主な全身性の副反応は、筋肉痛40%, 疲労39%, 頭痛33%でした。重篤な副反応はプラセボと差はありませんでした5)。
副反応の発現率は高いですが、軽~中程度で一過性のものが多いですね。
【海外の状況】
米国,カナダでは、サブユニットワクチンの接種を推奨 しております。
まとめると、
なお、海老名市在住の方は、市より、生ワクチンは3,000円の補助、サブユニットワクチンは1,0000円/回 (合計20,000円)の補助が出ます。
帯状疱疹ワクチン接種助成事業|海老名市公式ウェブサイト (city.ebina.kanagawa.jp)
帯状疱疹は80歳までに約1/3が感染し、50歳以上の感染者の2割に長期間続く神経痛をみとめます。
ぜひ、ワクチンの接種をご検討ください!
参考文献
1) Oxman MN, et al: A vaccine to prevent herpes zoster and postherpetic neuralgia in older adults. NEJM 352:2271-2284.2005.
2) Tseng HF, et al. Declining effectiveness of herpes zoster vaccine in adults aged≧60 years. J Infect Dis 213:1872-1875,2016.
3) Schmader KE, et al.Efficacy, safety, and tolerability of herpes zoster vaccine in personsbaged 50-59 years. Clin Infect Dis 54:922-928,2012.
4) Lal H, et al. Efficacy of an adjuvanted herpes zoster subunit vaccine in older adults. NEJM 372:2087-2096,2015.
5) Cunningham AL, et al.Efficacy of the herpes zoster subunit vaccine in adults 70 years of age or older. NEJM 375:1019-1032,2016.