先日、栃木県の自治医大の調査で小児多系統炎症性症候群(MIS-C)という新型コロナウイルス感染症後の重篤な病態の発症例が少なくとも国内で64例以上と報道がされました。
新型コロナ感染の子どものうち64人が「MIS−C」と診断|NHK 首都圏のニュース
新型コロナウイルス感染症後の小児多系統炎症性症候群 (MIS-C)
とはどのような病態なのでしょうか。
※MIS-C:Multisystem inflammatory syndrome in children
MIS-Cは、
✓ 新型コロナに感染した6~51日後 (概ね2~6週後) に発症します。
✓ 年長児に好発 (平均年齢9.3歳)し、発熱, 腹部症状 (腹痛, 嘔吐, 下痢), 循環器症状 (血圧低下・心機能低下など)発疹, 眼の充血, 神経症状などをみとめます。
✓消化器症状 (腹痛, 嘔吐, 下痢)を87%, 神経症状36% (頭痛・めまいは20%, 傾眠・無気力・興奮・精神状態の変化は10%) , 低血圧60%, 心機能低下51%, 心臓の冠動脈障害は21%, 発疹59%, 眼の充血57%に認めます。
✓ 発症機序は新型コロナウイルスの直接感染よりも、その後の免疫反応によるものが考えられます。
✓したがって、MIS-Cを発症した時の新型コロナのPCR陽性率は33~39%と低く、抗体陽性率は54~60%と高い、です。
✓新型コロナウイルス感染症が軽症あるいは無症状でも発症する可能性があります。
✓その頻度は海外の報告では0.1%未満とされています。
✓しかし、70%がICU管理を要します。
✓大部分は後遺症なく回復しますが、死亡率は1~2%と推定されています。
✓アフリカ, ヒスパニック, 南アジア系で報告は多いが東アジアではまとまった報告はな
く、日本国内での発症頻度は不明です。
新型コロナワクチンによりMIS-C発症リスクをを89%低下させたとデンマークより報告されています。
小児の感染者数の増加に伴い、MIS-C発症者数が増加する可能性があり注意が必要と思われます。
参考資料
1.小児COVID-19関連多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)診療コンセンサスステートメント 20210916_mis-c_c_s.pdf (jpeds.or.jp)
2.Mette Holm, et al. Risk and Phenotype of Multisystem Inflammatory Syndrome in Vaccinated and Unvaccinated Danish Children Before and During the Omicron Wave, JAMA Pediatr. 2022 Jun 8;e222206