発症頻度は稀ですが、米国疾病予防管理センター(CDC)より、新型コロナワクチン (mRNAワクチン)と心筋炎・心膜炎の関連が報告されています。
急性心筋炎・心膜炎とは、心臓を動かしている筋肉(心筋)や心臓の周りを覆う膜(心膜)が炎症を起こす病気です。原因としてウイルスが最も多いですが、細菌、真菌、薬物による場合もあります。原因ウイルスに感染後に、最初は喉の痛み、咳、発熱、筋肉痛、全身のだるさ、胃のむかつきなどのカゼ症状がみられ、その後、ごく一部の人が心筋炎を発症します。心筋炎としての症状は無症状のものから呼吸困難や心不全症状を伴うものまで様々です。
新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎の特徴として、
・女性<男性
・1回目の接種<2回目の接種
・接種後4日以内に生じやすい
・ほとんどの症例が軽症
と言われています。
今回、2022年6月にCDCより報告されたデータより、5~11歳の新型コロナワクチン接種後の心筋炎・心膜炎のデータを紹介したいと思います。
Update on myocarditis following mRNA COVID-19 vaccination (cdc.gov)
1.VAERS (Vaccine Adverse Event Reporting System)のデータ
VAERSは、1990年に創設され、CDCとFDA (米国食品医薬品局)によって管理されている、予防接種安全性に関する問題を早期に発見するモニタリングシステムです。予防接種後の有害事象の「自発的」報告を受けて解析する「受動的な」システムです。医療従事者, 製薬会社だけでなく、一般国民もオンラインで報告が可能です。重篤な有害事象については、追加情報を収集し、評価します。
強みは、「迅速性」です。弱みは2点あります。1点目は、報告者の自発的な報告に依存するためデータが偏る可能性があることです。もう1点は、ワクチンと接種後の症状の、因果関係の検証ができないことです。例えば、ワクチン接種後に心筋炎が起きた場合、ワクチンが原因とは断定できません。因果関係を証明するには、接種した人と接種していない人でその頻度を比較することが必要です。VAERSは、非接種の人のデータがないので比較検討ができません。
VAERSの立ち位置は、仮説を立てるところにあります。
2.VSD(Vaccine Safety Datalink) のデータ
VSDとは1900年に創設された9つの民間病院とCDCの共同プロジェクトで、アメリカ全体の3.7%をカバーします。強みは、電子カルテにアクセスしてさらなる検証が可能なことによる高い正確性です。接種群と非接種群の比較も可能で、過去にはロタウイルスのワクチンと腸重積のリスクの関連も報告されました。弱点は正式なレポートに数ヶ月~数年の時間を要することです。
結論としては、5~11歳の新型コロナワクチン接種後の心筋炎は極めて稀であるといえます。
先日、新型コロナウイルス感染による心筋炎により亡くなったと推測される女児例が報道されました。新型コロナに感染した3歳女児死亡 死因はコロナによるものと思われる『心筋炎の疑い』 20歳以下の死者は静岡県で初めて(静岡朝日テレビ) - Yahoo!ニュース
ワクチンによる心筋炎よりも感染による心筋炎の方が重症化のリスクは高いです。
こうしたことからも、
新型コロナワクチンの接種をおすすめします。