一昨日、日本小児科学会のHP上で、5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方が公開されました。
5~11歳小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY
簡潔にまとめたものを共有させていただきたいと思います。私もおおむね同じ考えではあります。私の解釈は斜字としております。
(参考文献は学会のサイトをご参照ください)
【背景】
・国内における5~11歳の新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)症例の大多数は軽症ですが、酸素投与などを必要とする中等症例は散発的に報告されている
・2歳未満(0~1歳)と基礎疾患のある小児患者において重症化リスクが増大
・長期化する流行による行動制限が小児に与える直接的および間接的な影響は大きくな ってる。(安心して外出できない, きょうだい児の体調不良時も欠席を余儀なくされる)
【海外における5~11歳への新型コロナワクチン】
・5~11歳の小児に対する同ワクチンの発症予防効果が90%以上と報告されているが、新しい変異ウイルス(オミクロン株)への有効性を示すデータは十分に得られていない
・米国で、2021年11月3日~12月19日の期間に、健康状況調査(v-safe)に登録された約4万人のデータでは、2回接種後、局所反応 (接種部位の痛み、腫れ、赤み)が57.5%、全身反応 (頭痛, だるさなど)が40.9%に認められ、発熱は1回目接種後7.9%、2回目接種後13.4%に認められた。
・同時期に、米国の予防接種安全性監視システム(VAERS)には、4,249件の副反応疑い報告があった。このうち97.6%(4,149件)が非重篤。重篤として報告された100件(2.4%) の中で最も多かったのが発熱(29件)であった。11件が心筋炎と判断されたが、全例が回復した。
【成人への接種について】
・子どもへの感染源の多くは周りにいる成人であることから、子どもを感染から守るためには、周囲の成人が免疫を獲得することが重要
・特に、子どもと接する業務に関わる成人は、保育所, 幼稚園, 学校, 放課後デイ, 学習塾など、職種・勤務形態を問わずワクチンを接種することが重要。
【子どもへの接種について】
1.重篤な基礎疾患のある子どもへの接種について
COVID-19の重症化を防ぐことが期待される。本人の健康状況をよく把握している主治医と、接種後の体調管理等を事前に相談することが望まれる。
2.健康な子どもへの接種について
5~11歳の健康な子どもへのワクチン接種は12歳以上の健康な子どもへのワクチン接種と同様に意義がある。健康な子どもへのワクチン接種には、メリット(発症予防等)とデメリット(副反応等)を本人と保護者が十分理解し、接種前・中・後にきめ細やかな対応が必要。
【私の考え】
迷う保護者の方も多いかと思います。小児科医の間でも接種に関しては色々な意見があります。
まずは、メリットとデメリットを考えて見ましょう。
メリット
・感染予防 (入院や後遺症の予防)
・安心して登校・登園や外出ができる (一定の感染予防対策は必要)
デメリット
・接種後の副反応
(一般的な、接種部位の痛みや全身のだるさ, 心筋炎などまれな重篤な副反応)
・オミクロン株への有効性を示すデータが十分ではない (おそれく有効ではある)
現在のオミクロン株の症状からすると、インフルエンザワクチン接種と考え方は近いのかもしれません。ただし、インフルエンザと比較し、隔離期間が長く(COVID-19は、10日間かつ症状が改善し3日経過、インフルエンザは5日間経過かつ解熱後2日, 未就学児は3日)、無症状のきょうだいや保護者も出勤や登校ができなくなります。もう1つは、mRNAワクチンということですよね。ワクチンの成分はすぐに代謝されるので、理論的には長期的な安全性は問題ないとされていますが、今後の検証が必要です。国産の不活化ワクチンの登場はおそらく2023年になるのではないでしょうか。
私は、「絶対に接種しましょう」でも「接種しなくてもよい」でもありません。個々のご家庭でメリット・デメリットを吟味していただいたうえで、ご判断いただく形になります。
私のできることは、報告された論文をしっかり読み、客観的な情報を提供させていただくことと考えております。