5~11歳への新型コロナワクチン接種への考え (私見)

はじめに

5~11歳への新型コロナワクチンは、努力義務 (接種を受けるよう努めなければならない) ではありません。最終的には、本人や養育者が納得したうえで接種を判断することになります。私自身、現時点では、接種をすべきとは言い切れません。以下に現時点での、私の考える、接種を推奨する意見・迷う意見をまとめました。ご家庭での判断の一助となればと考えております。

(1) 新型コロナウイルス感染症の症状について

大部分の小児は軽症ですが、基礎疾患のあるお子様は重症化する可能性があり注意を要します

また、頻度は少ないと思われますが、以下の病態が引き起こされる可能性があります。

  1. a) 心筋炎・心膜炎

5~11歳の頻度は不明ですが、20歳未満で876/100万(1141人に1人)という海外の報告があります。多くは軽症で予後は良好です

  b) コロナ後遺症 (long COVID-19)

だるさ, 頭痛や嗅覚障害などの症状が、発症後4週間を経過しても続きます。英国の小児1734名を対象とした調査で、発症28日後に4%, 発症56日後にも2%に症状をみとめたという報告があります。

  c)小児多系統炎症性症候群 (MIS-C/PIMS)

  新型コロナに感染した2~6週後に発症し、発熱, 腹部症状 (腹痛, 嘔吐, 下痢), 発疹, 眼の充血, 血圧低下などをみとめます。その頻度は海外の報告では0.1%未満とされていますが、重症度は高く、致死率が1~2%とされています。ただし、アジア人には少なく国内での発症頻度は不明です。

f:id:teammanabe:20220307042359j:plain

(2) ワクチンの効果について

 ワクチンは,感染症にかからないために, ②感染症にかかっても症状が軽くすむように,③感染症を周りの人たちにうつさないために,接種します。これに加え、接種により安心して登校や外出ができるようになる (接種による外出時の精神的な不安の軽減)ことも期待されます。

f:id:teammanabe:20220307042808j:plain

(3) ワクチンの安全性について

f:id:teammanabe:20220307043023j:plain

新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンは長期的な安全性など不明な点はありますが、新型コロナウイルス感染症も感染後の長期経過についてはまだ分かっていないことがあります。当院では、「接種する」「接種しない」いずれのご判断も尊重していきたいと思います。接種を迷われる場合は、もう少し様子を見ることをおすすめします。

接種を希望するお子様・保護者の方には,接種の際に不安が少なくなるよう努めていきたいと考えております。ご不明な点があれば気軽にご相談ください。

 

参考文献:

1) Zimmermann P, et al. Should children be vaccinated against COVID-19?, Arch Dis Child,  2022 Mar;107(3)

2) Pajon R, et al, Initial analysis of viral dynamics and circulating viral variants during the 
 mRNA-1273 Phase 3 COVE trial. Nat Med. 2022 Feb 10.

3)Singer ME, Taub IB, Kaelber DC. Risk of myocarditis from COVID-19
infection in people under age 20: a population-basedanalysis. medRxiv 2021:2021.07.23.21260998.

4) 工藤絵里子, 他.川崎病に準じて治療したCOVID-19関連小児多系統炎症性症候群の年長児例, 日本小児科学会誌, 125; 1574-1580, 2021