カゼの時の発熱の仕組みと過ごし方

今日から、これまで大事すぎて触れることを失念していた発熱について取り上げていきたいと思います。8月中に診察室で配布するプリントまで作れたら良いな🎁

 

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ヒトの体温の調節は脳の視床下部という部位で行われており、夏であろうと冬であろうと比較的一定に保たれており、季節により平熱が変わったりしません。この、体温を何度で維持するかの基準値をセットポイントといいます。エアコンの設定温度のようなものです 。ウイルスや細菌などの病原微生物による感染が起こると、それを押さえるために免疫反応や炎症反応を調節するサイトカインという物質が産生されます。このサイトカインの作用で体内でプロスタグランジン (特にPGE2) という物質が産生され、それが体温調節中枢に作用します。それにより、体の体温のセットポイント (設定温度)が上昇し、骨格筋の収縮により熱産生を促し、末梢血管を収縮させて皮膚から熱が逃げるのを防ぐことで体温を上昇させます。筋肉を収縮させて熱を作るので体がふるえ体表の末梢血管を流れる血液を減少させるので顔色は青白くなり手足は冷たくなります。体温が高いのに寒気を感じるのは、体温中枢の設定したセットポイントと現在の体温の差に寒気を感じているからです。寒がっているときは、毛布を掛けたりして体を温めることによって、セットポイントにより早く到達して寒気が早く治まる可能性があります

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寒がっているときの様子 文献より引用

 病気が軽快し、体温のセットポイントが低下すると、末梢血管の拡張や発汗にて熱放散を促すことで解熱します。

暑がっている時は、肌着1枚にして風を送ります。汗が乾く時の気化熱で熱を逃がすからです(気化とは液体が気体になることです。液体である汗が乾いて気体になる時に体から熱が奪われます)。夏であれば冷房を活用し、設定温度のこだわらず、十分に涼しいと思える状態で過ごします。

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暑がっている時の様子

注意点は、「汗をかく」のではなく「汗が乾く」ことが大事です。汗が出ている状態は汗が出るのに対して、汗が乾くことが追いついていない状態です。厚着をさせて汗をかかせて早く治そうという考えは誤りで、不快感をまねくだけとなってしまいます。

なお、腋窩や首などピンポイントで氷や冷却シートで冷やすことは、気持ち良いかもしれませんが、体温を下げる効果は大きくありません。

まとめると、発熱時は、吸湿性のよい服を1枚だけ着せて、あとは掛け物で調整するのが良いでしょう。

 

参考文献

1.菅原 鉄矢, 【いまさら聞けない子どもの薬】熱冷ましの効果の実態, チャイルド ヘルス. 2021;24:338-341.

2. 崎山 弘, 【子どもの病気のホームケア】熱がある, チャイルド ヘルス. 2019;22 :12-15.