破傷風について (4種・2種混合ワクチンに含まれます)

 今日は、乳幼児期に計4回接種する4種混合ワクチンと小学6年生で接種する2種混合ワクチンに含まれる「破傷風」ついて解説させていただきます。

 

破傷風菌について】

幅0.3~0.5μm, 長さ2~4μmと細長く、菌体先端に円形の芽胞がみとめられる、マッチ棒状の形をしております。偏性嫌気性菌といって、酸素のあるところでは生存・増殖ができず、通常は芽胞の形態です。芽胞は熱, 酸素や消毒液に耐性であるため、土壌中を中心に広いところに分布しております。ヒトーヒト感染を起こしませんが、日常生活において誰でも感染する可能性があります。

文献1より引用

破傷風の症状は?】(一般の方向けなので簡潔に記載)

 芽胞が創傷より侵入し、発芽・増殖して破傷風毒素を産生します。この毒素が末梢神経→中枢神経と移動し、神経の伝達障害を引き起こします。受傷から発症までの潜伏期間は約8日 (3~21日)で、肩こり, 頚部痛, 口が開けにくくなるなどを自覚します。その後、進行すると、全身の痙攣を引き起こし、適切な処置をしないと、致死率が高くなります。その後、症状は数週間かけて徐々に回復していきます。外傷の既往 (不明なこともあるが)と初期の口を開けにくいことより疑うのがポイントです。

 

【最近の動向】

1968年よりワクチンが導入されてからは著明に減少し、現在では、報告数は年間で120人前後、致死率は7%となっています。しかし、そこからは下がり止まっています。

1968年以前に生まれた方は、ワクチンが未接種かあるいは1回接種のみで抗体保有率が低いからです。

文献により。DTP:3種混合, DPT-IPV:4種混合

【小児例の報告】

小児の発症例は非常に稀ではあるものの散見されます。

文献2)~5)

1)は生後3ヶ月より、3種混合 (現在は4種混合) ワクチンを接種していれば、3) 4)は小学校6年生の時に2種混合ワクチンを接種していれば防げたかもしれません。1) 3)は感染契機も不明であり、ワクチン接種がとても重要になります。

2)は現在国内ではみられなくなった新生児破傷風です。衛生管理が不完全な場所での出産となった場合にリスクがあります。自宅分娩や墜落産の場合は注意が必要です。

 

【ワクチンスケジュール】

破傷風に対するワクチンは沈降破傷風トキソイドという破傷風毒素を無毒化したものが用いられており、4種混合ワクチン, 2種混合ワクチンに含まれます。小学校6年時の2種混合ワクチン接種を忘れないようにしましょう。

 

【外傷で受診時の対応】

ワクチンを未接種の小児が外傷で受診した際は、破傷風トキソイドを接種します。健康保険の適応にもなっております。受診から6時間以上経過している, 創傷の深達度が1cm以上、発赤がみとめらる場合は抗破傷風ヒト免疫グロブリン (毒素を中和してくれる)の投与を検討します。

 

参考文献

1.佐々木亮, 破傷風.医学のあゆみ 277, 112~116, 2021.

2.吉松昌司, 他. 完全治癒した破傷風の1乳児例. 日児誌 112, 1386-1389, 2008

3.小川智美, 他.新生児破傷風の1例.病原微生物検出情報 (IASR) 29, 50-51, 2008

4.津川毅, 他.破傷風の小児例 .病原微生物検出情報 (IASR) 37, 36-37, 2016

5.藤森良子, 他. 2期のDTが未接種であった10代の破傷風発症事例. 病原微生物検出情報 (IASR) 39, 27, 2018

6.成相昭吉, 破傷風. 小児科臨床 73, 1745-1749, 2020. 

7.山岸由佳, 他, 破傷風トキソイド, 小児科診療, 83, 1646-1650.