お母様からの質問:予防接種は混ぜて接種できないんでしょうか?

乳児期はワクチンの種類が多く、複数のワクチンを同時接種することが一般的です。

生後2か月 (初回)は、Hib, 肺炎球菌, B型肝炎 (注射), ロタワクチン (内服)を接種し、生後3カ月はそれに4種混合ワクチンが加わります。少しでの我が子の痛い思いを減らしたいという保護者の気持ちはよく分かります。しかし、質問「予防接種は混ぜて接種できないんでしょうか?」への答えは残念ながら「できません」理由は、複数のワクチンを混合して接種した場合の有効性 (抗体がつくかどうか)と安全性は未知数だからです。

何年か前にワクチンを混合して問題となった事例がありましたね。その、先生もおそらくは子ども達の負担を減らすために良かれと思ってやったのだと思いますが・・・

複数のワクチンを混ぜて接種していた医療行為に対する日本小児科学会の見解|公益社団法人 日本小児科学会 JAPAN PEDIATRIC SOCIETY (jpeds.or.jp)

今、お母様の悩みを解決すべく、海外では日本よりも多い多種混合ワクチンが使用されています。日本では、4種混合ワクチン (ジフテリア,破傷風, 百日咳, ポリオ) がそれに該当しますが、海外では、それに、HIbワクチンあるいはB型肝炎ワクチンを加えた5種混合ワクチンが2012年より使用されています。HibとB型肝炎を加えた6種混合ワクチンを使用している国もあります。さらに、欧州では肺炎球菌を加えた7種混合ワクチンを開発中です。

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世界における多種混合ワクチンの使用状況 (2020年7月1日現在)

日本では、次の多種混合化は生ワクチンではMMR (麻疹, 風疹, おたふく), 不活化ワクチンでは、5種混合 (4種+Hib)が候補となっておりますが、承認にはまだ時間がかかりそうです。日本で開発が遅れている理由の一つとして、過去に承認・使用されていたMMRワクチン中のおたふくかぜワクチンにより髄膜炎患者が多発したという苦い経験が挙げられます。海外と日本では人種差があり、安全性には慎重になる必要があります。

また、他の投与方法も開発されつつあります。例えば、経鼻法は、海外ではインフルエンザワクチンで行われています。

 

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また、経皮法といって、ワクチン成分を含むテープを皮膚に貼り付け、皮膚を介して体内に取り込ませる方法も開発中です。違う分野では、食物アレルギーに対する経皮免疫療法は注目されております。

 

参考文献

三瀬勝利, up-yo-date こどもの感染症 Vol.8 suppl1. 2020 p.12-13.