昨日に続いて論文を紹介します。
論文2.乳児に対する不活化ワクチンの同時接種の有害事象に関する検討
筆頭著者:大谷清孝
雑誌:日農医師, 64 (5), 798~807 2016年
【どんな研究?】
2012年7月~2013年の6月にワクチンを接種した乳児の接種後7日内の発熱 (37.5度以上),
体温の推移,皮膚の発赤, 腫脹, 硬結 (1cm以上)などを調査しました。単独接種した29名 (46回)と同時接種した31名 (42回)で比較しました。
【主な結果】
・発熱 (37.5度以上)は、単独接種6/46 (13%)に対し、同時接種9/42 (21%)
・皮膚の発赤 (赤くなる)は、単独接種12/46 (26%)に対し、同時接種9/42 (21%)
・皮膚の硬結 (硬くなる)は、単独接種3/46 (7%)に対し、同時接種8/42 (19%)
※いずれも統計学的な有意差はなし
・同時接種の方が、接種2日目の体温が高い (統計学的な有意差あり)
でも、わずかな差ですね。図で見るとせいぜい0.2度ぐらい?
(文献より引用)
【分かった事・考察】
・同時接種による、発熱、皮膚の発赤の頻度は約20%
昨日紹介した論文より、その頻度が多い理由は、症例数の違い, 乳児に限定している からなどが考えられる。
・同時接種により、発熱や皮膚の発赤や硬結のリスクは上がらない
・同時接種群の方が、接種2日目の体温が高いが、気にするほどの差はない
論文3:乳児期における同時複数接種と単独接種後の発熱の頻度の検討
筆頭著者:泉田直己
雑誌:小児科臨床, 69, 461-466, 2016年
乳児期に、DPT (3種混合), Hib, PCV (肺炎球菌), IPV(不活化ポリオ), ロタウイルスワクチンのいずれかを接種した乳児2,227件を対象。接種2日以内の発熱の頻度を単独接種と同時接種で比較した。
また、発熱の頻度は、肺炎球菌を含む場合67/715人 (9.4%)に対して、含まない場合2/126人(1.6%)で、肺炎球菌を含む場合に発熱のリスクが6.4倍上昇しておりました。
一見すると複数接種により、発熱の頻度が上昇するように見えますが、肺炎球菌ワクチンにより、そのように見えるだけといえます。