久しぶりのピックアップ 新型コロナ関連ニュース 2023年1月 いよいよ5類へ

久しぶりのピックアップコロナニュースです。一番大きな話題は、新型コロナが4月よりインフルエンザと同じ5類になることでしょうか。色々な意見が出ておりますが、当院としては、どのような状況でみベストを尽くすだけです。東大の22カ国を対象とした研究で、同じ地域でコロナとインフルエンザは同時流行しないという記事は興味深かったです。海老名・座間・綾瀨ではコロナとインフルが綱引き状態で勝った方が抜け出てくるのかな?

 

【政策】

1.〈独自〉新型コロナ、4月から「5類」に緩和へ 政府が20日決定 - 産経ニュース (sankei.com)

・屋内でのマスク着用については、症状のある人らを除き原則、不要とする方針

・医療費や入院費は一部自己負担

・感染者に求められる原則7日間の療養期間、濃厚接触者に求められる原則5日間の待 機期間も不要

(コメント) 決まったことは仕方がない。現場ではできることをやるだけですね。ただ、5類にしたことによる影響はきちんとアセスメントしてほしいですね。

 

一般の方の視点に立った、5類への移行によるメリット・デメリットは大阪の忽那先生が分かりやすく解説してくださっています

news.yahoo.co.jp

 

2.中国人の解熱剤「爆買い」阻止へ、ドラッグストアに個数制限など要請…厚労省 | ヨミドクター(読売新聞) (yomiuri.co.jp)

 

3.10日から全国旅行支援再開 割引率減も春先の予約好調 - 産経ニュース (sankei.com)

 

 

【医療現場】

1.医療現場も「ウィズコロナ」…心疾患やがんの感染患者、それぞれの専門医が診療(読売新聞オンライン) - Yahoo!ニュース

・コロナ担当医が全身診察→基礎疾患のある方はそれぞれの科で対応

・コロナ専用病棟→一般病棟の中にコロナ部屋を作る

・全数把握の見直しにより保健所の負担は大幅に軽減

2.コロナ感染急増で献血減 安定供給がピンチ 赤十字「月末に厳しくなる恐れ」 鹿児島 | 鹿児島のニュース | 南日本新聞 | 373news.com

高校などに出張するのはどうでしょうか?

3.【独自】「起こるべくして起こった」救急車の“居眠り”横転事故 隊員は約17時間ぶっ続けで活動…コロナ第8波の過酷な勤務実態(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース

救急隊はコロナ以前より過酷な業務です。24時間勤務→休日を交代で繰り返しています

しばらくは、コロナは流行の波を繰り返すのではないかと思います。救急隊員の人数を増やすか救急車の有料化を決めないと持ちこたえられなくなるのではないでしょうか

 

4.医療現場が逼迫している理由を倉原先生が分かりやすく解説してくださっています

news.yahoo.co.jp

 

【ツインデミック】

1.コロナとインフルは“同時には流行せず” 22カ国調査の東大など研究チーム (tv-asahi.co.jp)

国全体でみると同時流行だが、地域別に詳しくみると、コロナとインフルはそれぞれ違う地域で流行。コロナとインフルエンザは同じ時期に同じ地域、同じ規模では流行していないことが確認された。

(コメント) 当院の地域ではどちらも多くはありません。綱引き状態なのかな?

 

【ワクチン】

1.第一三共がコロナワクチンの承認申請 追加接種用、「国産」2社目(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース

mRNAワクチンです。

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季節性インフルエンザ薬の治療【総論】

 インフルエンザが完全に流行期に入っていますね。現在のところ100%A型です。今日は、季節性インフルエンザの治療薬についてざっくりと解説していきたいと思います。

 治療薬は、これまでは、のイラミニダーゼ (NA) 阻害薬という細胞内で増殖したウイルスが細胞外から出て行くのをブロックする (もし、出て行ったら新たな細胞でさらに増殖😨)お薬が中心でした。2018年に、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬というウイルスのmRNAの合成開始を阻害する、全く作用機序の異なるバロキサビルマルボキシル (商品名:ゾフルーザ) というお薬が登場してきました。

https://www.higashiyodo-med.org/news3.htmlより引用

NA阻害薬は色々な種類がありますので下表にまとめます。 

基本的に小学校低学年以下のお子様はタミフルRが第1選択薬となります。この年齢だと吸入薬は難しいからです。

吸入薬はリレンザR, イナビルRの2種類があります。気管支喘息が基礎にあり、吸入ステロイドの服薬をしているお子様は、問題なく吸入可能だと思います。それ以外のお子様は10歳以上ではほぼ問題ないでしょう。

吸入薬の手技はこんな感じです。

リレンザ吸入動画画面|吸入レッスン・吸入指導サイト (kyunyu.com)

イナビル:(12) 成人編吸入動画 イナビル【手順編】 - YouTube

それぞれの特徴は下表のようになります。

当院ではリレンザRを処方しております。

一見すると、イナビルRは、1回ですむし、良さそうと思うかもしれません。しかし、

1回勝負で失敗したらアウトです。また、効果もエビデンスに乏しく、海外では、臨床試験で症状改善までの期間がプラセボと同等であったため販売されておらず, 日本でのみ認可されています。ネブライザーは、薬の内服が苦手なお子様, 嘔吐で服用が難しいお子様の場合は選択肢にあがりますが、ネブライザー手技を通じてインフルエンザウイルスが拡散するリスクがあるため当院では実施しておりません🙇

ラピアクタRは点滴静注薬です。薬の内服が苦手なお子様, 嘔吐で服用が難しいお子様の場合は選択肢にあがりますが、当院では採用しておりません。入院例に実施されることが多いかなと思います。

 

新しい治療薬である、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬である、バロキサビルマルボキシル (商品名:ゾフルーザ) は、単回投与により、タミフルRと同等の解熱時間短縮効果が期待できます。また、タミフルよりもウイルス量を軽減させるようです。また、NA阻害薬と作用機序が異なるため、NA阻害薬耐性ウイルスにも効果が期待できます。しかし、新たな変異ウイルスの出現が懸念されています。他の治療薬と比較して明確なメリットがないので当院では使用しておりません。

 

最後に成人の方は価格も気になると思われますので、10割負担の場合の価格もまとめておきます 。ざっと調べたので正確性は保証できないことご了承お願い致します🙇

タミフルジェネリックがコストパフォーマンスが1番良さそうですね。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=DG03029を元に計算

参考文献

・日本臨床内科医会インフルエンザ研究班編, インフルエンザ診療マニュアル2020-2021年シーズン版 (第15版)  

・N Eng J Med 379:913-923,2018

 

 

 

まなべ小児科は少しずつですが常に動いています~コロナでオンライン診療の方はWeb決済が可能に

 当院は、新型コロナウイルス感染症の方にオンライン診療も実施してきました。患者さんより感謝のお言葉をいただくことが多いのですが、課題も少なくありません。その1つが診療費の管理です。それまでは、療養期間があけた後にお支払いにいらしていただいておりましたが、患者さんにとっても負担になりますし (海老名市河原口やほぼ藤沢市綾瀬市の方など遠方の方も少なくありません)、事務スタッフにとっても管理が少し煩雑となっておりました。そこで、クレジットカードによるWeb決済を導入することにしました。VISAあるいはMasterに限り対応可能です。しばらくは、Web決済は、新型コロナウイルス感染症時のオンライン診療のみの対応と考えておりますが、今後は舌下免疫療法中の方への運用も検討していきたいと思います。

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 院内では、新しく冷蔵庫も買いました。ワクチンの種類が増え、もう少し容量のある冷蔵庫が欲しいと、12月の1on1面談で看護師より要望があったからです。

看護師さん達のテンションがあがっているのをみて嬉しくなりました

また、カルテ記録用のタブレットがほしいと要望がありました。これまでは、患者さんから聞いた情報を、紙にメモし、設置してあるノート型PCに入力と手間がかかっていましたが、その場で入力できるようになりました。結果的に、患者さんの待ち時間の短縮にもつながると期待しております。

このように、スタッフと定期的に面談しつつ、クリニックをバージョンアップさせております。現在は、少しでも待ち時間を楽しくするための準備を進めております。楽しみにしてくださいね。





 

 

【赤ちゃんのワクチン】Hibワクチン

 今年の目標の1つとして、小児が接種するワクチンの解説とYou tube動画を整備していきたいと思います。

 まずは、ワクチンデビューの赤ちゃんが最初に接種するワクチンの1つHib (ヒブ) ワクチンについて解説します。

 Hibとはインフルエンザ菌の中の莢膜を有するタイプ のうちのb型です。インフルエンザ菌には莢膜のないタイプと莢膜のあるタイプ (a~f型) があります。

 莢膜のないインフルエンザ菌は毒力が弱く血流に入ることなく気道の粘膜上皮に感染します。中耳炎, 肺炎, 副鼻腔炎の主要な原因菌となります。 

 莢膜を有する菌は毒力が強く咽頭の粘膜上皮を貫通し直接血管内に侵入します。なかでも、血清型B型 (Hib)は毒力が強く、髄膜炎, 関節炎, 喉頭蓋炎などの重症な感染症を引き起こします

 

 

特に、Hibが脳を覆う髄膜という場所に侵入し炎症を起こす、Hib髄膜炎は、2007~2013年の発症例において、約0.6%死亡し、12%が後遺症を残すというおそろしい疾患でした。私が若い頃は、熱性けいれんの重責状態で搬送されてきたお子様がいたら、必ず細菌性の髄膜炎の可能性を頭に入れながら対応しておりました。

 

こうしたことから、Hibワクチンは2013年4月より定期接種化されました。

次の図は、5歳未満, 人口10万人あたりにおける、Hibワクチンの公費化前後のHibによる侵襲性(重症) 感染症罹患率の変化を示しています。

髄膜炎は2008~2010年は10万人当たり7.7人だったのが、定期接種化されて以降は激減しております。

参考文献より

今回は以上になります。赤ちゃんにワクチンを接種する意義の理解の一助となれば幸いです。

     

【参考文献】

1.菅 秀, チャイルドヘルス21,330-333,2018

2.Suga S, vaccine 2018, 36:5678-5684

ピックアップ 育児・教育関連ニュース 2022/12月後半~1月前半

12月後半~1月前半に興味深い育児・教育関連ニュースをピックアップしました。

父親も育児に関わることの重要性はお母様が妊娠中から発信していきたいですね。

 

【教育現場】

1.教員研修「いつでも、どこでも」…オンラインで動画配信へ : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

とても良いことだと思います。忙しい教員の先生も勉強しやすくなるのでは。でも、勉強するのは一部の意識の高い先生に限定されそうですね (医者もそれは同じです😅)ポイント制にするなど全ての先生が視聴する工夫が必要だと思います。

 

【教育内容】

1.【独自】学習態度・学力ばらつき「小1問題」解消、文科省が5歳児に「教育プログラム」 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

子どもを変えるのではなく、小学校の授業をユニバーサルデザインを意識した授業に変えていく必要があるのではないでしょうか。せめて、就学前は伸び伸びと過ごさせてあげたい。支援の必要な子を早くピックアップできるというメリットはあるかもしれませんが。

ユニバーサルデザインとは↓

teammanabe.hatenablog.com

 

【育児】

1.父親が育児関わった子ども 思春期の精神不調リスク 低い傾向に | NHK | 医療・健康

子どもが生後6か月の段階で、父親がおむつを取り替える、入浴させる、遊び相手をするなどといった関わりをいつもするか、ときどきすると答えていた場合、ほとんどないなどと答えていた場合に比べて子どもが16歳の時点で精神状態が不調になるリスクが、およそ10%低かった。

 

【政策】

1.「防衛の方が先にいっちゃった」 子ども予算倍増への道筋は?小倉こども政策担当大臣に問う(TBS NEWS DIG Powered by JNN) - Yahoo!ニュース

2.移住支援、子1人100万円 来年度、支援金を加算 政府(時事通信) - Yahoo!ニュース

移住をうながすならリニアモーターカーの整備が一番効果的だと思いますが。

品川→山梨まで40分なので、移住する人が増えそうですね

3.東京都が0~2歳の第2子保育料を無償化、全世帯対象…新年度予算案に関連経費200億円 : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

東京都は18歳以下の都民全員に月に5,000円を給付する方針を打ち出すなど本気度が伝わってきますね。

 

【その他】

1.日本で初めて放課後を横断的に扱う、日本放課後学会設立のお知らせ|特定非営利活動法人Chance For Allのプレスリリース (prtimes.jp)

学童保育、放課後デイ、塾、ならいごと、プレイパーク、こども食堂、部活など、放課後を取り巻くありとあらゆる実践者と研究者のためのコミュニティ

面白そうな学会ですね。入会したいけど、すでに9個の学会・研究会に所属しており、これ以上が厳しいかな😭

 

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「おしりが膿んでいます」~肛門周囲膿瘍の治療は漢方薬が中心

 外来に、「おしりが膿んでいます」を主訴に受診される方が時々いらっしゃいます。肛門の周囲が赤く腫れてて膿をもつようになる病気を肛門周囲膿瘍といいます。

 

1.特徴は?

生後1ヶ月前後~1歳くらいの乳幼児にみられます。

男児が約90%を占めます。

・好発部位は3時, 9時方向です。

1歳過ぎには自然治癒する傾向にあります。

下痢や便秘が発症の増悪要因になります。

 

文献より引用

2.原因

解剖学的な問題, 免疫の未熟性, ホルモンバランスの問題と推測されています。

 

3.治療

・オムツ皮膚炎を原因とするものは、清潔にすることで自然治癒が期待できます。

抗菌薬の内服や外用に治療効果はありません

漢方薬 (最近では、第1選択)  

 急性期:発赤・腫脹あり 排膿散及湯 0.2~0.3g/kg/日 4週間ほど

慢性期:少量の排膿をみとめるが、発赤・腫脹は軽減  十全大補湯 0.2~0.45g/kg/日

切開・排膿 

 

4.専門医療機関へ紹介する状況

 ・上記治療が効果ない場合

・1歳以降も再発を繰り返す場合 

【再投稿】カゼ予防について:うがい

今回は、「うがい」について解説します。

マスクや換気ほどクローズアップされていませんが、これも大事ですね。

全文読むのは大変、と思った方は色付きのところだけでも読んでくださいね。

 

(1) うがいの歴史

うがいの語源は、「鵜飼」です。日本では古代より、鵜というペリカン目の鳥を飼い慣らし、それを漁に利用してきました。鵜には、水に潜って魚を捕り、喉に一時的に蓄える習性があります。鵜の喉を縄で結い、魚を飲み込ませないようにし、後で吐き出させますが、その様子に似ていることから「うがい」と呼ばれるようになりました (下図)。ちょっとかわいそう・・・。

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うがいは、我が国では、平安時代より行われてきました。しかし、欧米ではうがいの有効性が疑問視されており、日本や韓国など一部地域のローカルな習慣となっております。その理由は、第1に、ウイルスは侵入してから、数十分~数時間の短時間で細胞に感染するとされているからです。例えば、習い事から帰宅後にうがいをしてもすでに遅いということになります。第2にうがいでは鼻腔内や喉の隅々の病原体には対応できないからです。従って、うがいの有効性に関する報告は、アジア地域からが大部分です。我が国で行われた2つの研究を紹介したいと思います。

 

(2) 幼児を対象とした研究

2006年1月に、福岡市内の保育所145カ所の2~6歳の幼児, 約2万名(福岡市の同年代人口の約1/3)を対象に行われました1)。保育園内で1日1回以上のうがいを行っている児 (うがい群) と行っていない児 (非うがい群) の2グループを、20日間追跡し、発熱した割合を比較しました。その結果、全体では、うがい群は非うがい群と比べて発熱した児の割合が32%少なくなっていました。年齢毎で見ると、発熱した児が2歳児では33%, 3歳児では25%が減少していたのに対して、4歳児では54%, 5歳児では59%も減少しておりました。このことは、年齢が高くなれば、うがいは上手になることと関連しているかもしれません。また、この調査では、何を用いてうがいをしたかも調べられていました。その結果、緑茶 (減少率68%) > 機能水 (アルカリイオン水またはオゾン水, 減少率54%) > 食塩水 (50%) > 水道水 (30%)の順に有効でした。

 

(3)成人を対象とした研究

2002年にボランティアで募った18~65歳の健康成人387人を対象に行われました2)。くじ引きで、水道水でうがいをする群, ポピドンヨード (イソジン)でうがいをする群, うがいをしない群の3群に分けられました。2つのうがい群では、約20mlの水で1回15秒間の3回を1セットとして、1日3回以上うがいをしました。その後、60日間追跡し、機気道のかぜ (急性上気道感染症)を発症した割合を比較しています。その結果、水道水でうがいをした群は、うがいをしない群と比較し、かぜの発症が40%少なくなっていました。しかし、ポピドンヨードでうがいをした群とうがいをしない群に差は見られませんでした。その理由として、咽頭の正常細胞や常在菌を傷害することにより、カゼの原因となるウイルスがかえって侵入しやすくなることが推察されています。

 

(4) まとめ

欧米では推奨されておりませんが、我が国の研究結果より、うがいにはかぜ予防の効果があるといえそうです。しかし、そのメカニズムはよくわかっておりません。なぜ、洗浄箇所が口腔内に限定した, 1日に数回程度のうがいが、どのようにしてかぜを予防するのか?これを解明していく研究が今後必要と思われます。

 

参考文献

参考文献

1.Noda T, et al. Gargling for Oral Hygiene and the development of Fever in Childhood: A Population Study in Japan. J Epidemiol 2012; 22: 45-49.

2.Satomura K, et al. Prevention of upper respiratory tract infections by gargling: a randomized trial. Am J Prev Med 2005; 29: 302-307.