季節性インフルエンザ薬の治療【総論】

 インフルエンザが完全に流行期に入っていますね。現在のところ100%A型です。今日は、季節性インフルエンザの治療薬についてざっくりと解説していきたいと思います。

 治療薬は、これまでは、のイラミニダーゼ (NA) 阻害薬という細胞内で増殖したウイルスが細胞外から出て行くのをブロックする (もし、出て行ったら新たな細胞でさらに増殖😨)お薬が中心でした。2018年に、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬というウイルスのmRNAの合成開始を阻害する、全く作用機序の異なるバロキサビルマルボキシル (商品名:ゾフルーザ) というお薬が登場してきました。

https://www.higashiyodo-med.org/news3.htmlより引用

NA阻害薬は色々な種類がありますので下表にまとめます。 

基本的に小学校低学年以下のお子様はタミフルRが第1選択薬となります。この年齢だと吸入薬は難しいからです。

吸入薬はリレンザR, イナビルRの2種類があります。気管支喘息が基礎にあり、吸入ステロイドの服薬をしているお子様は、問題なく吸入可能だと思います。それ以外のお子様は10歳以上ではほぼ問題ないでしょう。

吸入薬の手技はこんな感じです。

リレンザ吸入動画画面|吸入レッスン・吸入指導サイト (kyunyu.com)

イナビル:(12) 成人編吸入動画 イナビル【手順編】 - YouTube

それぞれの特徴は下表のようになります。

当院ではリレンザRを処方しております。

一見すると、イナビルRは、1回ですむし、良さそうと思うかもしれません。しかし、

1回勝負で失敗したらアウトです。また、効果もエビデンスに乏しく、海外では、臨床試験で症状改善までの期間がプラセボと同等であったため販売されておらず, 日本でのみ認可されています。ネブライザーは、薬の内服が苦手なお子様, 嘔吐で服用が難しいお子様の場合は選択肢にあがりますが、ネブライザー手技を通じてインフルエンザウイルスが拡散するリスクがあるため当院では実施しておりません🙇

ラピアクタRは点滴静注薬です。薬の内服が苦手なお子様, 嘔吐で服用が難しいお子様の場合は選択肢にあがりますが、当院では採用しておりません。入院例に実施されることが多いかなと思います。

 

新しい治療薬である、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬である、バロキサビルマルボキシル (商品名:ゾフルーザ) は、単回投与により、タミフルRと同等の解熱時間短縮効果が期待できます。また、タミフルよりもウイルス量を軽減させるようです。また、NA阻害薬と作用機序が異なるため、NA阻害薬耐性ウイルスにも効果が期待できます。しかし、新たな変異ウイルスの出現が懸念されています。他の治療薬と比較して明確なメリットがないので当院では使用しておりません。

 

最後に成人の方は価格も気になると思われますので、10割負担の場合の価格もまとめておきます 。ざっと調べたので正確性は保証できないことご了承お願い致します🙇

タミフルジェネリックがコストパフォーマンスが1番良さそうですね。

https://www.kegg.jp/medicus-bin/similar_product?kegg_drug=DG03029を元に計算

参考文献

・日本臨床内科医会インフルエンザ研究班編, インフルエンザ診療マニュアル2020-2021年シーズン版 (第15版)  

・N Eng J Med 379:913-923,2018