当院の発達支援診療はどんなことをやっているの? 【講演会の内容より】

昨日の続きです。

それでは、当院の発達支援外来はどのような診療をしているのでしょうか

 

まずは、現在の診療体制ですが、院長先生との2診の曜日 (月, 土) に対応しております。しかし、この体制での維持は今後難しく、秋からは縮小せざるを得ない状況となりました 。通院中の方にはアナウンスをしているところです。

では、当院での診療内容についてです。

講演スライドより

①診断

まずは、診断ですが、ベースにある発達特性は暫定的な診断をさせていただいております(分からない場合は分からないとお話しします)。初回から暫定的な診断をさせていただくことについては異論のある方もいらっしゃるかもしれませんが、理由としては、1) 必要な支援 (療育の利用など)を受けるには診断が必要, 2) 保護者, 教員にとって診断名のあった方が対応しやすくなる(書籍を読むなど自主的に勉強しやすくなる)などです。なお、大きくなって2次障害が出てくるとアセスメントや対応は難しくなってきます。

 

②検査

心理士が不在のため、簡単なアセスメントしかできません。知能検査など時間のかかる検査はできません。座間市教育委員会がしっかり対応してくださるのでありがたいです。某市は「そちらで出来ないんですか?」と言ってきて、むっとしたことがあります。心理士の人件費を市が負担してくださるなら、検討していきますけどね。

 

③治療

発達支援として、特性の説明, 環境調整や行動療法のお話をしております。分かりやすい本をすすめることもありますし、事前にいただいた質問に該当する箇所をコピーしてお渡ししたりしております。患者さんによっては、薬物を使用することもあります

ADHDの治療薬, 入眠障害に対するメラトニン,自閉スペクトラム症児のイライラに対するアリピプラゾールやリスペリドンなどです。

講演スライドより

④書類作成

講演スライドより

・診断書

療育の利用や支援級に在籍には必要となります。2,000~3,000円/通です。

・特別児童扶養手当

障害の程度によぅては、給付を受けられる場合があります。3,000円/通です

詳細は以下より

 

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・学校の先生へのお手紙 

ご希望のあった方は、学校の先生にお手紙を作成しております。

私が一方的に作るのではなく、お母様とやり取りしながら完成させていきます。

オーダーメイドになるので、1人あたり3時間以上かかる場合もありますが、お子様にとっては重要な書類なので3,500円で提供させていただいております。

(スタッフからは1万円でも安いと言われております)

 

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以上、ざっくりですが、当院の発達支援外来の様子が何となくでも伝われば幸いです。

 

 

 

小児科医の発達障害診療の実態は 【論文&私の講演より】

 

昨日は、発達障害は小児科医にとって日常的に診る機会があり、ある程度の対応ができる必要がありますよ~というお話をさせていただきました。

 

それでは、小児科医の発達障害の診療の実態はどうなのでしょうか・・?

 

今日は2019年に報告された熊本県での調査とそれに基づいた私の講演スライドを紹介していきたいと思います。

 

熊本県での調査は、

著者:田中恭子, 中村公俊

タイトル:小児科医の発達障害診療の実態と意識調査

雑誌:日本小児科学会雑誌, 2019, 123:597~604   

 

研究の概要ですが、アンケート調査です。熊本小児科学会に所属する医師374名を対象とし、アンケート調査票を郵送で送付しております。

回答があったのは、99名 (回収率26.5%) でした。

文献より引用

開業医は1/3でした。過去2年間の発達障害に関する講演の受講は約60%で、今後の研修の受講意向ありが86.9%で、比較的発達支援へのmotivationの高い医師に偏っている

可能性はあります。

 

では、小児科医はどれぐらい実際に発達支援の診療に関わっているのでしょうか?

半年間で発達障害の診療なしが約半数でした。その一方で、半年間で100名以上診療は

約16%でした。数少ない医師で対応しているのが現状となっております。なお、当院は

半年間でのべで約220名ほど対応しております。(のべでなければ80名ほど)

繰り返しになりますが、回答率が低く、また意識の高い人ほどこのような調査に協力する傾向がありますので、実際は、発達障害の診療無しである、医師の割合はもっと高いのではないかと思います。

 

講演スライドより。図は文献より引用

では、診療していない医師は必要性を感じていないということでしょうか?

いいえ、そんなことではないようです。

下図は、一般小児科医として関わるべき内容についての回答ですが、「医学的知識を持っている」「発達障害特性に気付く」「保護者に気になる点を伝える」「専門医へ紹介する」の4項目ASD (自閉スペクトラム症), ADHD (注意欠如・多動症), SLD (限局性障害)それぞれについて80%以上の医師が必要と回答しておりました。

文献より引用。各項目について棒グラフが3本ありますが、上からASD, ADHD, SLDとなっております。

ここからは、発達障害の診療をしていない医師でも、発達支援診療の必要性を感じていることがうかがえるかと思います。

しかし、多くの小児科医は診療経験がなく、どうしていいのか分からない、というのが実際と思います。

 

そこで、私のような、一般小児科医とアレルギーが専門で、勤務医時代は発達支援の診療経験のなかった者が、開業医となってからどのように立ち上げたのか、という話はこのような先生方が、新たに発達支援診療にトライするにあたり参考になるのではないかと思いました。少しでも発達支援に関わる先生が増えることで、全国の支援を要するお子様・ご家族の一助となればという思いで講演会をHenryさんと一緒に企画したのです。

 

次に続く・・・

 

 

支援を要する生徒・児童は増加している 【私の講演より】

今日からしばらくは、私が3月下旬に、当院の利用 (開発協力)している電子カルテの会社Henry主催で行った講演「発達支援外来立ち上げのポイント」の内容を一部抜粋しながら紹介していきたいと思います。

 

小児科にとって発達支援診療は必須となっております。

 

文部科学省によると、支援級在籍の生徒数は、2008年→2018年の2年間で約12万人→約26万人と倍増しております。

 

特別支援学校の生徒数や通級を利用している生徒数も同様の傾向が見られております。

 

では、支援を要する生徒は合計でどれぐらいいるのでしょうか?

2012年の文部科学省の調査で、通常の学級に在籍する小学生・中学生全体の6.5%程度
(男子の9.3%程度,女子の3.6%程度)が,知的発達に遅れはないものの学習面・行動面のいずれかまたは両方で著しい困難を示すと推定される、という衝撃的な結果が発表されました。 特別支援教育 (特別支援学校, 支援級, 通級) を受けている生徒は全体の2.9%でした。すなわち全体で6.5+2.9%=9.4%の児童・生徒が支援を要しているといえます。なお、10年前のデータなので今はもっと増加しているのかもしれません。

 

 

9.4%はどれぐらいの数字なのか?小児科医が日常的に経験する疾患と比較してみましょう。アトピー性皮膚炎のガイドライン2021によると、小学1年生の11.8%アトピー性皮膚炎を有するとされております。熱性けいれん診療ガイドライン2015によると、熱性けいれんの有病率は7~11%, 5歳までの有病率は3.4%という報告があります。

発達障害は、小児科医にとって、日常的に診るものであり、一定の対応ができる必要があると考えられます。

 

しかし、現状はどうなのでしょうか・・?

次に続く・・・

 

 

 

食物経口負荷試験 制限ありつつ再開します

4/30 (土)の午前終了後のカンファレンスで、食物経口負荷試験の再開について

話し合いました。食物経口負荷試験に使用する場所を、新型コロナが疑われる患者さんの対応に使用しており、そのため、負荷試験を長い間中止にしておりました。

外来を受診した食物アレルギーの患者さんより、「いつ再開できるんですか?」

と問い合わせをいただくことが多く心苦しく思っておりました。

新型コロナウイルス感染症の方の週当たりの人数はだいぶ減少しましたが、しばらくは今の15人前後の水準で推移する可能性がありますし、GW後に再増加に転ずる可能性もあります。しかし、そんなことを言っていたら、いつまでも再開できません。

そこで、(火), (金)の午後13:50~, 各1人で食物負荷試験を再開することにしました。

タイムスケジュールは、

集合:13:50

開始:14:00~ (14:15の時点で途中でも摂取終了)

終了:~16:00

です。

これならば、発熱患者さんと重なるリスクを抑えられると思います。

15分以内に負荷食を摂取しなければいけない、午後の時間帯のみなど制約は多いですが、全くできないよりは前進できると思い、このような形を取らせていただきました。

1度、この形で再開してみて、新型コロナウイルス感染症の状況を見つつ、今後の運用を考えて行きたいと思います。

食物経口負荷試験をご希望の方は、まずは、副院長の外来 (火・金はどの時間帯でも可, 他の曜日は要予約)でご相談ください。皆様の満足のいく形ではないかもしれませんが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

ACイラストよりダウンロード

 

2022/5/2~ (月) (火) (金) が15:00~16:00をカゼ症状なしの方の受付時間帯になります&引き続き 感染拡大対策にご協力お願い致します

4/30 (土) にカンファレンスを行い、カゼ症状なしの時間帯の今後について話し合いました。スギ・ヒノキ花粉に飛散が減少したことに伴い、水曜日のカゼ症状なしの時間帯の受診がピーク時より、大幅に減少したことを確認しました。同時に全ての日でカゼ症状で受診するお子様の数が増えております(園デビューしたお子様達が洗礼を受けております)そこで、水曜日の14:30~16:00もカゼ症状なしの時間帯を廃止することにしました。

 

下記はあくまでも受付時間であり16時以降はカゼ症状ありの方も受付し、待合に入ること、ご了承お願い致します

 

カゼ症状の定義:発熱、咳嗽、腹痛、嘔吐・下痢

喘息発作による呼吸困難や食物アレルギーによるアナフィラキシーなど緊急対応を要する可能性のある方はご連絡ください。

 

  15:30以降に受付される方が多いと、16:00に入れ替えがスムーズに行かず、具合の悪い方を廊下で長い時間お待たせしてしまうということが起こっております。 

・来院は早めにお願いいたします。

16:00を過ぎたらカゼ症状のある方にも開放します。

・カゼ症状なしの方は、中待合や他の部屋に移動していただく場合もあります。

以上、ご不便をおかけすることもあるかと思いますが、ご協力のほどよろしくお願いいたします。

 

当院としては、カゼ症状なしの方専用の受付対応の曜日を増やす、新型コロナ感染症が疑われる患者さんは院外や別室で対応する、自宅での抗原検査が陽性であった例や家族内に発症者のいる方はLINE電話で対応する、など、工夫して対応をしております。また、どうしてもご不安な方には、500円をいただいた上に、処方箋を取りにいらしていただきますが、LINE電話による診療も行っております。

全ての患者さんに100%の対応でなく、最大公約数の対応となっていること、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

 

つづいて、新型コロナ感染症対策へのご協力のお願いです。

 

1.院内が密になってきたら、院外でお待ちいただく場合があります

院内の込み具合により、受付スタッフより、院外でお待ちいただくことをお願いする場合があります。診察の順番が近くなったら電話連絡いたします。

2.発熱がある場合、以下に該当する方は必ず事前にご連絡をお願い致します。

・ご家族や周囲に新型コロナウイルス感染者や濃厚接触者がいる

発熱、咳嗽、咽頭痛のうち2つの症状を認める

 現在流行中の新型コロナウイルス感染症の特徴は↓

 

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3.マスクは、不織布マスクを鼻まで覆った状態でご来院ください

(お子様もマスクの装着が可能な場合は在院中だけでもお願い致します)

 

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4.外にも消毒液を設置します 

5.付き添いの方は最小限でお願い致します。

 

 

 

【続報】小児における原因不明の急性肝炎について 

海外の記事からの情報ですが、欧米中心に報告が増加している小児の原因不明の急性肝炎について新たな情報を紹介します。

Mysterious Cases of Severe Hepatitis Outbreaks in Children Continue to Rise | Medriva

記事前半の英国の部分は正確な情報でしたので、信頼しても良いかなと思います。

 

ほとんどが数日前のブログに記載させていただいた内容ですが、新たな情報として、

・10例が肝移植待ち

・16例が新型コロナウイルス陽性であったが、2022年1~4月はCOVID-19発症者が増加 していた時期だから、意外ではない (アデノウイルスとの重複感染例もあり)

全例が新型コロナワクチン未接種 (=新型コロナワクチンが原因ではない)

を追記します。

過去記事:

 

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今度は、新型コロナウイルス感染症後の影響 (Long-covid説)も出てきました。

イスラエルではこの4ヶ月で12例の報告があり、2例が肝移植を要しました。残りの12例はステロイドの投与で速やかに回復し、退院しております。11/12例が前年に新型コロナウイルスに感染しており、肝臓の炎症は、Long covidの症状という仮説も出てきております。

 

インドでは小児の急性肝炎の入院例を後方視的 (過去にさかのぼり)調査しました。

その結果、昨年のデルタ波の時期に一致して原因不明の急性肝炎例の増加を認めました。新型コロナウイルス感染症と時間的な関係が見られたようです(これは全例新型コロナウイルス感染例ということなのか?英文の内容がきちんと理解できず、すみません💦)47例のうち、37例は肝炎症状のみで、肝逸脱酵素 (AST, ALT) の上昇がありましたが、支持療法のみ (=特殊な治療なく)で回復しております。10例は、MIS-C型肝炎で多臓器が傷害され、ICU入室を要し、30%が死亡しております。

※MIS-Cとは 過去記事 

 

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病因不明の重度の肝炎は以前より一定の割合で見られていました。しかし、短期間で報告例が増加しており、今後もその動向には注意が必要です。

 

原因として、アデノウイルス感染症の他に新型コロナウイルスが関連している可能性も浮上してきましたが、まだ推測の域を出ません。

有用な情報が入りましたら、随時更新させていただきます。

 

ACイラストよりダウンロード

「ツ」と「シ」がごっちゃにならない技

新1年生の皆様、小学校には慣れてきましたでしょうか?新しい環境で疲れも溜まってくる頃と思います。GW中に、疲れを取りつつリフレッシュしてくださいね。

小学校では、もうカタカナに入った頃でしょうか?「ツ」と「シ」って右側の線が上からなのか下からなのかこんがりませんか?今日は私から技を紹介します(どこかで読んだ技で私のオリジナルではありません)

ひらがなを書いて、見比べると分かりやすいです

どうでしょうか?  

少しでもお子様の「できた!」が増えると嬉しく思います。