今日は学校健診で行われている側弯検診についてお話ししていきたいと思います。
1.側弯症とは
側弯症とは、本来まっすぐである脊柱 (背骨) が弯曲する疾患です。その大部分を占めるのが、明らかな原因の分からない特発性側弯症ですが、大部分は思春期で、特に女児で罹患率が高く、13~14歳の女児では約2.5%と報告されています1)。
発症には遺伝的要因が大きいとされ、近年多くの疾患に関連した遺伝子が同定されています2)。
生活習慣との関連を検討した方向では、側弯群と非側弯群で、カバンの持ち方, 睡眠時間, 姿勢, 勉強時間などは関連なく、クラシックバレーの経験, 低BMI (BMI; body mass index; 体重÷(身長×身長m) ) が側弯群で有意に頻度が高く, バレーボールとバスケットボールの経験は非側弯群で有意に高かったと報告されています3)。
2.側弯症のスクリーニングを学校健診で行う意義は?
日本では1979年に学校健診に導入され、2016年度からは運動器検診として引き継がれています。2013年に米国より、側弯症に対する装具治療の有効性が高いエビデンスレベルで証明され、早期発見の意義は大きいとされています4)。
3.側弯症のスクリーニングの方法
下図のように視診と前屈テストで行います。
モアレ方という身体の背部表面の形状を等高線で表示し、大患の非対称性を鋭敏に評価する検査や側弯症の背部隆起の判定にデジタル化えらを使用した自動計測装置が報告6)されているが、当地域ではこうした客観性のある検査機器はなく、視診のみで対応しております。
スコリオメーターという器具は自前で購入できそうなので来年度の健診では持参しようと思います。
3.側弯症検診の問題点
視診によるものなので確実な診断が容易ではありません。
実際に、下図は各県での1次検診での側弯症の罹患率を示したものですが、各県でばらつきがあります。本来、側弯症は約2%なのですが、ほとんどの県で2%を下回っております。
さらに、最近では、検診が着衣で行われるようになっており、より難易度が上がっております。
2)2次検診率の低さ
これは、側弯に限らず、全ての疾患で言えますが、学校検診で指摘されても、受診しない方は比較的多いです。
3) 費用対効果が必ず高くない
最後に
文献を読み、「問題が多い」と感じているのは私だけではなく安心しました。海老名市で検査機器を購入してもらい、一斉に検査するのはどうでしょうか?でも、それは現実的ではないですよね。できることをやるしかないです。とりあえず、来年度は、スコリオメーターをひっさげ、のぞもうと思います。
参考文献
1) Ueno M, et al.A 5-year epidemiological study on the prevalence rate of idiopathic scoliosis in Tokyo: school screening of more than 250,000 children, J Ortop Sci 2011;16:1-6.
2) Takahashi Y, et al: A genome-wide association study identifies common variants near LBXI associated with adolescent idiopathic scoliosis.Nat Genet 43:1237-1240, 2011.
3) Watanabe K, et al.Physical activities and lifestyle factors related to adolescent idiopatic scoliosis. J Bone Joint Surg 99-A:284-294, 2017
4) Weinstein SI, et al. Effects of brancing in adolescents with idiopatic scoliosis. N Engl J Med 2013;369:1512-1521.
5) 川上紀明. 小児側弯症の新しい潮流. 東京小児科医会報, 2019,38, 70-75.
6) 須藤英毅, 他. 側弯健診システムの研究開発.臨床整形外科 3: 306-310, 2019.
7) 渡辺航太, 学校の運動器検診における側弯症検診の課題と今後のアプローチ, 日医雑誌,2022, 150 (11), 206-209.