何回かに分けてこどもの肥満をテーマに取り上げてみたいと思います。
肥満があると、下記のような、高脂血症, 糖尿病, 高血圧→動脈硬化→脳卒中, 心筋梗塞のリスクがあります。
小児の肥満・肥満症・メタボリックシンドローム (MS) の定義ですが、
肥満:脂肪が体に蓄積した状態
肥満症 :内臓脂肪型肥満に起因した健康障害を合併するかどの合併が予測される場合
健康被害とは、脂質異常症,高血圧,高尿酸血, 非アルコール性脂肪性肝疾患, 月経異常,睡眠時無呼吸症候群,運動器疾患など
MS: 腹部肥満 (ウエスト80cm以上, 小学生では75cm以上あるいは腹囲/身長0.5以上) に加え、血清脂質異常 (中性脂肪高値120mg/dl以上, HDL-C低値40mg/dl未満), 血圧高値 (収縮期血圧125mmHg以上and/or 拡張期血圧70mmHg), 空腹時高血糖 (100mg/dl以上)の動脈硬化危険因子のうち2つ以上が特定の個人に集積している状態
です。
肥満症とMSの違いってよくわからないですよね。私もあやしいです😅
肥満症は疾患 (病気)として診断し減量により治療するための概念, MSは予防のための概念のようです。肥満症は幅広い健康障害を標的にしていますが、MSは心血管疾患発症予防に特化している点が異なるかなと。
学校現場では、肥満度を用います。標準体重が性別・年齢・身長別に設けられていますが、現体重がこの標準体重より何%重いかを計算して求めます。
(標準体重:fuhyo3.pdf (umin.jp)
例えば、男児で7歳, 身長120cm, 体重30Kgの場合、標準体重は22Kgなので、肥満度は
肥満度=(実測体重-標準体重) / 標準体重×100 (%)
= (30-22)/30×100= 26.6%で軽度の肥満になります。
肥満の程度は、
軽度肥満:20%以上30%未満
中等度肥満:30%以上、50%未満
高度肥満:50%以上
と分類します。
では、実際に学校健診で肥満による医療機関への受診をすすめられた児のうちのどれぐらいに、血液検査の異常やメタボリックシンドロームを伴っているのでしょうか?
北九州市にある産業医科大学のデータを紹介します、北九州市では、高度肥満や肥満の急進をみとめた全児童に受診勧奨を行っています。
結果は、
・90%以上が小児肥満症と診断 (高度肥満では全例)された
・男児の約50%, 女児の約30%にALT (肝機能) 高値, 中性脂肪高値をみとめた
・約40%がMSと診断された
軽度・中等度肥満でも、肥満の急進をみとめた児の1/3にMSが存在
小児期からすでに動脈硬化が始まっているということですね😱
これはクリニックだけでは厳しい。地域全体で連携していかないといけない問題だと思います。
参考文献
1.山本, 幸代, 小児の肥満・肥満症のスクリーニングと治療介入, 肥満研究. 2020.12;26(3):333-338.
2.岡田, 知雄, 子どもの肥満症Q&A 子どもの肥満症に対する正しい理解と対応法の普及を目指して, 小児保健研究. 2021.11;80(6):695-700.