先日の外来時に、お母様からのついでの質問で、「上の歯と歯の間があいています。将来の歯並びが心配です」をいただきました。
いつもは、「乳歯が生えそろうのは2歳半頃で、それまでには変わってくるから経過観察で良いです」とお話しておりますが、この方は上唇小帯付着位置異常がみられました。経過観察という方針は変わらないのですが、今日は上唇小帯付着位置異常について解説していきたいと思います。
なお、この分野は歯科が専門であり、私の専門外であることご了承お願い致します。
専門の歯科医の先生がご覧になり、あれ?とおもったらご指摘をお願いします。
1.上唇小帯付着位置異常とは?
上唇小帯とは、上唇の裏側~上顎正中部歯肉へと伸びるヒダです。
下に正常例と野坂らによる異常型の分類(文献6) を示します。
酒井らの乳幼児174名を対象とした検討によると、正常型は約70%で、異常型はⅠ~Ⅲ型で大部分を占めておりました。
なお、外来でご相談のあったお子様はⅠ型でした。
2.上唇小帯付着位置異常によって困ることはありますか?
これが原因で乳幼児期の哺乳障害, 摂食障害や発音障害が生じることはないようです。
乳歯が生え揃ったころに、上唇小帯が原因で、ブラッシングがしにくく、う歯を発症しやすくなる可能性はあります。
3.治療方針は?
成長に伴い自然の改善が認めますので、永久歯の生えてきた7~8歳までは経過観察します。その頃までに改善がなければ専門の先生に紹介させていただきます。手術の適応年齢は10歳前後で、お子様の協力が得られる場合には局所麻酔で行われることが多いようです。
参考文献
1.小方 清和,【子どものコモンな微徴候・微症状】口・歯 上唇小帯や舌小帯が短い,
小児科. 2021;62:1035-1040.
2. 鈴木 冴沙, 他.乳歯列期における上唇小帯の形態と付着位置に関する調査研究 幼児における実態, 小児歯科学雑誌. 2019;57:444-450.
3. 小方 清和, 小児歯科セミナー 小児の舌小帯、上唇小帯、粘液嚢胞の治療方針 患児・家族説明のポイントと外科手術, DENTAL DIAMOND. 2019;44:51-62.
4.酒井 暢世, 他, 乳歯列期における上唇小帯の形態と付着位置に関する調査研究, 小児歯科学雑誌. 2017;55:44-50.
5., 松田 光悦, 【エビデンスに基づく手術の適応とタイミング】舌小帯・上唇小帯短縮症,
小児外科. 2014.;46:777-780.
6.野坂久美子,他. 1歳6ヶ月歯科健診に関する研究-上唇小帯について; 小児歯科,22:262-271, 1984