当院で診療中のADHDの方で、ご家族が投薬について悩むことがしばしばあります。
今回は、ADHD児への投薬による学習態度の変化について検討した論文を紹介させていただきます。
論文:注意欠如・多動症の児童への投薬による学習態度の変化について
筆頭著者:杉浦信子
雑誌:小児の精神と神経 61 (3):239-245, 2021
研究の目的
ADHD児への薬物両方では主に行動面の症状改善によって効果が判定されるが、学習面、特に学習態度への影響は明らかではない。
研究の対象
ADHDの児童39名 (うち男児32名, 平均年齢8.2歳)
知能指数WISC-Ⅳで65~130 (平均94.7)
抗ADHD薬:コンサータ単剤17名, ストラテラ単剤20名、両者の併用2名
診断~投薬開始までの期間 0~1,570日 (平均270日)
評価方法
投与前後で通知表を確認
投与前~投与後の評価期間は1~4学期
全科目で共通する「関心・意欲・態度」を評価 (1~3)
結果
(1) ADHD-RS
スコア (高いほど症状が強い)は、家庭版・学校版ともに投薬前より低下した。
(2) 成績表の評価の変化 (全学年)
国語, 算数, 体育が有意に改善した。
(3) 成績表の評価の変化 (小3~小6)
小3~理科・社会が始まるため小3~小6に限定して評価
全学年と同様に、国語, 算数, 体育が有意に改善した。
(感想) ADHD児への投薬により、学習態度が改善する可能性が示されましたね。ADHD児への投薬は慎重であるべきですが、その一方で、学習姿勢を小学校低学年のうちに定着させておくことは重要です。この観点から早めの投薬という方針も今後は検討していく余地があると思われました。