歯科医の友人からの質問 「1歳児の1日の水分量の上限は?」~水中毒に注意

 先日、歯科医の友人より、「1歳のお子様の水分はどれぐらいまで摂取させて大丈夫なの?とにかく水やお茶をたくさん飲む。水中毒なども心配だし・・・」と質問がありました。おしっこもたくさん出るようです。

 結論としては、1日の水分摂取量は、体重7Kgで700ml, 体重10Kgで1,000ml, 15Kgで1,250ml, 20Kgで1,500mlが目安。上限量については明確な基準はありません。多飲・多尿があるなら水中毒の他に糖尿病や尿崩症など基礎疾患の可能性を考え、病院の受診をした方が良いでしょう。

 

 今回は、水中毒についてお話ししていきたいと思います。水中毒は、Na(ナトリウム)濃度の低い水分を過剰に摂取することにより、低Na血症となり、痙攣, 意識障害, 嘔吐, 低体温などの症状を起こす病態です。水分の過剰摂取という外的な要因の他に、乳幼児の腎機能未熟による内的な要因も考えられています。幸い、予後は良い(後遺症を残すリスクは少ない)ようです。

 

では、どのような水分をどれぐらいの量摂取すると水中毒になるのでしょうか?過去の報告をまとめて表にしました。

水中毒の症例報告のまとめ

300ml/Kg/日の水分摂取で水中毒のリスクがあがると言われておりますが、もっと少ない量でも発症していますね。

アクアライトやアクエリアスの摂取で発症しているのも注意が必要です。脱水にならないように, 体に良いと思って, などの理由で与えがちになってしまうこともあるかと思います。これらにはNaには含まれておりますが、低濃度であり、過量摂取は低Na血症を引き起こしてしまいます。添付文書に書いてある決められた量を摂取してくださいね。

 

お子様の多飲・多尿が心配なら、まずは病院を受診しましょう。彼はあれから連絡ないがお子様を病院に連れて行ってくれたかな?

 

参考文献

1.波若 秀幸, 他,. 希釈ミルクと清涼飲料水による水中毒でけいれん重積を来した乳児例, 小児科臨床. 2016.11;69:1798-1806.

2.藤野 真帆, 他. 水中毒による無熱性けいれんを来した一例, 奈良県西和医療センター医学雑誌. 2019.03;8:44-47.

3.田上 幸治, 他,習慣性多飲の背景に低Na血症性痙攣を発症した幼児2症例, 日本小児救急医学会雑誌. 2010.10;9:353-358

4.宮城 なつき, 他.乳幼児イオン飲料を背景に高ADH血症を伴いけいれんを群発した幼児例, 小児科. 2010.09;51:1319-1321.

5.日根 幸太郎, 他.過剰水分摂取により無熱性痙攣を来した水中毒の1幼児例, 子どもの心とからだ. 2010.06;19:59-64.

6.城所 博之, 他.痙攣重積にて発症した水中毒の幼児2例, 日本小児救急医学会雑誌. 2007.06;6:173-176.

7.小野田 正志,他.【思いがけない健康被害】スポーツ飲料多飲による低Na血症, 小児科. 2003.02;44:151-157.