生後1~2ヶ月の人工乳の少量摂取は牛乳アレルギーの発症を予防する

今日は、牛乳アレルギーの発症予防に関する論文を紹介します。

Randomized trial of early infant formula introduction to prevent cow's milk allergy - PubMed (nih.gov)

沖縄県の4施設で実施された研究です。

 

👶どんなbabyが対照になったの?

すべての新生児が対象 

 

👶研究の目的は?

生後1~2ヶ月 (2ヶ月間)の人工乳の摂取が生後6ヶ月時点の牛乳アレルギーの発症に与える影響を検討する

 

👶研究の方法は?

文献より引用し改変

生後5日でリクルートされ、生後1ヶ月~生後2ヶ月まで、摂取群 (母乳+10ml/日以上の人工乳)243名 vs  除去群 (母乳+必要に応じ大豆乳追加群)249名に分けられました。生後3ヶ月以降は母乳+必要に応じて人工乳追加とした。生後6ヶ月に人工乳100mlの食物経口負荷試験が行われています

 

👶結果はどうだったの?

(1) 生後6ヶ月時点での牛乳アレルギーの発症率

牛乳アレルギーの発症率 文献より引用し改変

全体では、牛乳アレルギーを発症したのは、摂取群 (母乳+10ml/日以上の人工乳)は2/242 (0.8%) に対し、除去群 (母乳+必要に応じ大豆乳追加群17/249 (6.8%)

発症率でした。こうした研究の場合、プランを守れない方は一定数で発症します。この研究の場合は、例えば、摂取群だったが人工乳を赤ちゃんがいやがり摂取できなかった人、などです。研究プラン通りに摂取できた👶だけを対象とすると、なんと、牛乳アレルギーを発症したのは、摂取群 (母乳+10ml/日以上の人工乳)は0/242 (0%) に対し、除去群 (母乳+必要に応じ大豆乳追加群17/195 (8.7%) 発症率でした。

 

(2) 生後6ヶ月時点での皮膚テストの結果

生後6ヶ月時の皮膚テストの結果。文献より引用し改変

牛乳は摂取群 (母乳+10ml/日以上の人工乳)より、除去群 (母乳+必要に応じ大豆乳追加群)の方が、有意に皮膚テストの反応が大きかったです。鶏卵については、両群で差はありませんでした。

 

(3) 血液検査

文献より引用し改変

皮膚テストと同様に、牛乳は摂取群 (母乳+10ml/日以上の人工乳)より、除去群 (母乳+必要に応じ大豆乳追加群)の方が、牛乳IgEは有意に高値でした。反対に、牛乳IgG4抗体 (埼玉医大の呼吸器内科永田教授の言葉をお借りすると、アレルゲンに反応するIgEの働きを邪魔する善玉抗体)は、摂取群 (母乳+10ml/日以上の人工乳)の方が有意に高値でした。

 

👶この研究から言えることは?

生後1~2ヶ月に少量の人工乳を摂取することは、母乳育児をさまたげずに、牛乳アレルギーの発症を予防する。

 

(感想)

一般集団が対象 (アレルギーのリスクの少ない人も含まれる)なので、かなりインパクトの強い研究ですね。また、患者さんへの負担が多くないのも素晴らしいと思います。

さすがに、この介入は鶏卵には影響なさそうですね・・・。

先日、紹介した生後3日以内の人工乳除去の論文と合わせて、牛乳アレルギー発症の予防戦略について、週末はまとめていきたいと思います。