突発性発疹の罹患年齢は上昇している/感染経路としては兄姉や園が重要

今日は、突発性発疹に関する論文を紹介します。

 

まず、突発性発疹とは、

乳幼児に罹患することが多い

☑ 約3日間の発熱、解熱後に顔面・体を中心に、かゆみを伴わない発疹が出現する

ヒトヘルペスウイルス6B (HHV-6B), ヒトヘルペスウイルス7 (HHV-7) が原因

 つまり、2回かかることがある

感染源は家族の唾液と推測されている。

 

論文は、

タイトル:日本での突発性発疹の罹患年齢の上昇と感染様式

筆頭著者:鳥越 貞義

雑誌:日児誌 126: 494-499, 2022

 

研究で分かったことは、

突発性発疹の発症月齢は上昇している 

突発性発疹にかかる乳幼児は減少している可能性がある

突発性発疹に罹患後の唾液中のヒトヘルペスウイルス量 (HHV)は、感染初期は少

 なく、感染後4ヶ月がピーク

 →発症者を休園させる意味はない

HHVにはHHV-6BとHHV7がある。HHV-6Bは園や兄姉から感染、

 HHV-7は成人からの感染が主体

 

詳しく知りたい方は以下へ

(1) 突発性発疹の発症月齢は上昇している

文献より引用

1992~2019年までを、1992~1996/2002~2006/2012~2019の3期に分けて解析しています。1992~1996年(白)は、生後6~7ヶ月が発症のピークで、1歳未満の発症が全体の75.9%でした。それに対して、2012~2019年(黒)は発症のピークがはっきりしなくなり、1歳未満の発症は全体の31.2%でした。

 

(2) 突発性発疹にかかる人は減少している

文献より改変し引用

これは、保護者に、お子様が突発性発疹にかかったかどうかを確認したものです。

全ての年齢において、突発性発疹にかかった割合は減少しております。

本当に減少しているのか?不顕性感染 (感染しても症状が出ない)が増えているのか?典型的でない例が増えているのか?

 

(3) 突発性発疹後の唾液中のウイルス量は感染後3~6ヶ月が最大

26例 (男児8例, 平均月齢14ヶ月) の児の突発性発疹後の唾液中ウイルスDNA量を追跡した結果です。25/26例がHHV-6Bでした。HHV-6B DNAの検出頻度は急性期には低く,感染後4か月後が最大95%陽性でそれ以降減少しました.HHV-6BのDNA量も同様の傾向でした。なお、HHV-6Bに感染後に、HHV-7の唾液中ウイルスが陽性 (= HHV7にも感染)となった例が7例いましたが、突発性発疹の症状をみとめた例はいませんでした

文献より引用 横軸は発症からの期間

 → 感染初期の排出ウイルス量は少ないこと、長期間にわたりウイルスを排出する、ので突発性発疹にかかっても休園させる意味はないということですね。

 

(4) 成人はHHV-7, 小児はHHV-6Bの陽性率が高い

下図は健康な、3~5歳児20例と成人23例の唾液を採取したものです。HHV-6Bの陽性率は、小児50%に対し、成人4.3%でした。その一方で、HHV-7は、小児では20%,成人では56.5%の陽性率でした。

HHV-6Bの感染は乳幼児が主体、HHV-7の感染は成人が主体

文献より改変し引用

(5) 保育園の入園や兄姉の存在がHHV-6B感染に関与している

保育園に新たに入園した37人と、未就園の47人の入園前と入園6ヶ月後のウイルスDNAの変化を追っています。最初にウイルスDNAが陰性で、6ヶ月後に陽性であった場合陽転という)の場合は、この期間のヒトヘルペスウイルス感染を意味します。

文献より引用
 

初回の唾液中ウイルスDNAが陰性だった児が6か月後に陽転した割合は、HHV-6Bに関しては,新入園児では56.7%(17/30)で未就園児の28.6%(10/35)より有意に高率でした.HHV-7では新入園児は15.2%(5/33)で未就園児は6.8%(3/44)であり差はありませんでした。→ HHV-6Bは園で感染することが多い

 

また、入園前のウイルスDNAの陽性率を兄姉の有無で比較すると、HHV-6Bに関しては,兄姉あり群の陽性率は31.7%,兄姉なし群の陽性率は14.0%と差を認めました。一方,HHV-7に関しては,差がありませんでした.

文献より引用

📖著者らの結論

HHV-6Bの主な感染源は兄姉や園、HHV-7の主な感染源は成人である。突発性発疹にかかる年齢が上がっているのは少子化が影響しているのではないか。唾液中にウイルスを長期間排出するので、突発性発疹にかかったあとの、登園制限は不要である