中学生は自身の病名・病状ならびに治療方針の自己決定に関心を持っている

小学校高学年以上になるとある程度は診療に参加できるはずですが、外来だと(特に急いでいる時は)つい保護者の方中心の対応となってしまいます。中学生がどの程度、自身の病名・病状を知りたいかについて子どもの意見を調査した研究がありましたので共有させていただきます。

 

論文名:中学生を対象とした病名・病状告知と治療の自己決定に関する意識調査

筆頭著者:辻恵 (神奈川県立こども医療センター)   

雑誌:日本小児科学会誌 125; 1021-1028, 2021

 

📝調査方法

2018年4月1日~2019年3月31日に来院した中学生の初診患者 (緊急入院を除く) 369名への質問紙による調査

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📝結果

回答率は185/369名 (50.1%)であった。回答者は、児童精神科52名 (28%), 整形外科

40名 (21%), 総合診療科26名 (13.9%) と続いた。

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文献より

●病名を知りたいですか?

知りたい:80.5%,  どちらでもない:16.8%, 知りたくない:2.7% 

知りたいと回答したのは、男児 59/79 (74.6%) に対し、女児90/106 (85%)で有意差を

認めた。

●病気の具体的な症状や予後についても知りたいですか?

全て知りたい 57.3%, ある程度は知りたい 33%

●病名を誰から聞きたいですか?

医師から40.5%, 医師でも家族でも良い51.4%, 家族より 7.6%

●自分でどんな治療を受けるか決めたいですか?

絶対orだいたい自分で決めたい 45.7%, どちらでもよい 42.5%

●医師が家族よりも子どもの意見を聞いた方が良いと思うのは何歳からですか?

中央値は13歳。

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文献より

医師と1対1で話せる時間があった方がよいですか?

あったほうがよい 33%, どちらでもない43.8%, ない方がいい 20%

あったほうがよいの割合は、12歳:25%→13歳:29%→14歳:37%→15歳:47%と年齢とともに増加。

📝結論

わが国の中学生が、自身の病名・病状ならびに治療方針の自己決定に関心を持っていることが明らかになった。小児患者の自己決定支援のために、子どもの希望や発達段階に応じた病状説明を行えるような体制づくりが必要である。

 

👓感想

小児科ではつい保護者主体になってしまいますが、この論文からは、中学生も病状の理解や自己決定に興味を持っていることが分かります。しかし、一般外来では、中学生の病状のプレゼンを聞く、病気の説明をする時間は厳しく、本人への説明がほとんどできていないのが実情です(薬を忘れないでね~ぐらいは言えますが、なんで調子の良い日でも続けないといけないのかなど踏み込んだ説明はできていない)

専門病院の研究であり、当院とは患者さんの層も異なりますが、中学生の子向けに、病気の説明を考えた方がのぞましいと思いました。まず、アレルギー疾患についてどのように本人に理解してもらうか、看護師・事務を含めて相談していきたいと思います。