当院では乳児期のアトピー性皮膚炎の方を、ワクチンや健診の時に、診察・処方しております。「70%は治る。皮膚のコントロールが大事」「2,3歳には治る子も多いよ」などお話していますが、乳児期のアトピー性皮膚炎を13歳まで観察した報告が国内よりでましたので共有させていただきます。
論文は、
タイトル:乳児期から思春期におけるアトピー性皮膚炎患者の長期前向き疾患観察研究
筆頭著者:泉 佳菜子
雑誌:アレルギー. 2021;70:384-391.
です。
📏方法
皮膚科医が乳幼児健診に参加しアトピー性皮膚炎 (AD) の有無を評価
調査1: 生後4ヶ月→18ヶ月→3歳
調査2:3歳
その後、13歳時に、International Study of Asthma Allergirs in Childhood (ISAAC)という質問票を送付
調査1,2の1,230名のうち422名が回答 (回収率34.3%)
📏結果
1.13歳時点の状況:16.9%がADと診断
2.4ヶ月時~の経時的な検討 (調査1:210名)
有症率は生後4ヶ月 48名 (22.9%), 18ヶ月35名 (16.6%), 3歳42名 (20%), 13歳 39名 (18.6%)
各月齢でADと診断されなかった例のAD発症率は以下
3歳で以降にはじめてADと診断された症例は少ない。逆に13歳時点でのAD39名のうち28人 (71.8%)が3歳までにADを発症していた。
生後4ヶ月からは以下の16のパターンの経過を取る
論文中ではあまり触れられていませんでしたが、生後4ヶ月でADと診断された児の約半数は1歳半時点で治癒する、生後4ヶ月でADと診断された児の約70%が13歳時点で治癒する、というのも大事な情報ですね。
3.3歳以降の検討 (調査1+調査2)
3歳児にADと診断された54人中、13歳時にもADと診断されたのは22人 (40.7%)
3歳児にADと診断されなかった257人中、13歳時にもADと診断されたのは32人 (12.5%)
3歳児にADと診断された児は13歳時にもADと診断される可能性は、3歳時にADと診断されなかった児と比較して高かった。
📏結論
13歳のAD児は3歳までの早期発症が多いことが示唆された。
📏感想
アンケートの回収率が低く、生後4ヶ月時点でのADの有症率が20%を超えており、回答者に偏りがあったと考えられる(ADのあった人の方が積極的に回答)。また13歳時点でのアンケート調査も記憶の不確かさの可能性はある。しかし、乳児期から思春期まで同じ人達をおった興味深いデータであり、外来で今後の見通しを説明する資料の一つとしたい。