【論文紹介】自閉スペクトラム症児における生活習慣病

今日は、自閉スペクトラム症 (ASD) 児生活習慣病健診について検討した論文を紹介します。

 

論文は、

タイトル:自閉症スペクトラム児における生活習慣病予防健診の検討

著者:冨田理絵 (小豆島中央病院小児科) 

雑誌:小児の精神と神経 60: 239-245, 2020  

 

研究の背景は?

ASD者は2型糖尿病や肥満などの生活習慣病の発症率が高い

小児期からの肥満が多い

その背景として、偏食, 運動不足, 睡眠障害などASD特有の問題が報告されている

✎研究の目的は?

小豆島島内で小学校4年生に行っている、生活習慣病予防健診の結果をもとに、ASDにおける肥満やメタボリックシンドロームなどの生活習慣病のリスクや睡眠や運動などの小児期の生活習慣との関連を明らかにする。

どんな子が対象となったの?

2012年4月~2017年3月の間に小豆島で行われた生活習慣病予防健診を受けた小学4年生

516人を対象。ASD児38名と定型発達 (ND) 児478名を比較した。評価項目は、身体計測、血液検査、生活習慣についてのアンケート。

✎結果は?

(1) 身体計測・血液検査

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文献より。p<0.05が有意差のあった項目です


体重、肥満度、腹囲、T-cho (総コレステロール), AST&ALT (肝機能) いずれもASD

の方が高値ですが、正常範囲内には入っていますね。

しかし、メタボリックシンドローム、肥満、高血圧の割合を見ると、ASD群の方が明らかにその割合は高い、という結果が得られました。

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文献より。p<0.05で有意差あり

Mets(Metabolic Syndrome:メタボリックシンドローム)
(1) ウエスト周囲長≧75cm and/or ウエスト周囲長/身長≧0.5

かつ 空腹時TG≧120mg/dl and/or HDL-Cho<40mg/dl

(2) 収縮期血圧≧125mmHg and/or 拡張期血圧≧70mmHg

(3) 空腹時血糖≧100mg/dl 

の3項目のうち2項目を満たす

肥満度:(実測体重-身長別標準体重)/身長別標準体重かける100%, 20%以上で肥満

高血圧:収縮期血圧≧125mmHg and/or 拡張期血圧≧80mmHg

(2) 生活習慣の比較

生活週間スコア (30点満点, 高いほど生活習慣が悪い)は、食事, 運動/睡眠 いずれも

ASD群の方が、ND群より高かった。一部を抜粋すると、「食事を速く食べる」と

回答した人はASD群の26.3%に対し、ND群の6.7%であった。「惣菜・弁当をよく使う」

と回答したのはASD群18.4%に対し、ND群4.8%であった。「運動が嫌い」と回答したのは、ASD群15.8%に対し、ND群8.2%であった。

起床時刻・就寝時刻は差を認めなかったが、睡眠時間はASDの方が13分短かった。

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文献より引用

✎結論
ASD児では、小児期の時点で生活習慣病のリスクが高かった。ASD児では小児期より生活習慣病についての支援が必要である。

 

感想

とても興味深い報告ですね。外来で睡眠について気にすることはあっても、食事について気にすることはあまりありませんでした(偏食の有無程度)肥満が偏食からくるのか、保護者がおとなしくしてもらうためにお菓子を強化子として使いすぎたのか・・。

外来で肥満度の確認やお菓子を強化子として使っていないかを確認しつつ、偏食へのアプローチも必要ですね。

小豆島なら数年ごとに経過を追えるのかな?著者の先生型、ぜひ、お願いします。