今回は、小児期の肥満は成人期の肥満のリスクであることを、三重県での研究を紹介しながらお話していきたいと思います。
まずはこの研究の概要からです。
1976~1992年に肥満を主訴に通院した6~15歳児を対象とし、1998年, 2011年と長期的な経過を追った貴重な研究です。図に肥満度やBMIという言葉が出てきていますが、これはどういう意味なのでしょうか。
肥満度は6~18歳の肥満の判定に用いられる評価指標です。現体重が、性別, 年齢, 身長別に設けられている、標準体重より何%重いかを計算して求めます。軽度肥満 (20%以上30%未満), 中等度肥満 (30%以上50%未満), 高度肥満 (50%以上)と分類されています。
BMI (Body Mass Index)は体重/身長の二乗で計算され、肥満1度 (25以上), 肥満2度 (30以上)と分類されています。
さて、結果はどうだったのでしょうか?
まずは、1998年(平均年齢21.8歳) の結果からです。
・全体として54.7%が肥満1度 (BMI≧25)と判定
・小児期に軽度肥満例の76.5%, 中等度肥満の58.8%が成人期には標準体型に
・その一方で、高度肥満例のうち標準体型になったのは26.6%のみ
(=73.4%が肥満を継続)
次に、2011年 (平均年齢34.2歳)の結果です。
・全体として68.8%が肥満1度 (BMI≧25)と判定 (20歳代より増加)
・肥満を継続した群は解消した群と比較して、健康度が低く、高血圧症, 脂肪肝, 2型糖尿病など生活習慣病の割合が高かった。
最後に、性差をみていきましょう。
下図は小児期の肥満度別にみた、2011年 (平均年齢34歳)における肥満の継続割合になります。軽度・中等度では女性の半数以上が成人期に肥満を解消していたのに対し、男性では70%以上が肥満を継続していました。女性の方がやせ志向が強い, 男性は中年期に内臓脂肪を蓄積しやすいと考察されていました。高度肥満の場合は85%が肥満を継続しており、性差はありませんでした。
この研究から、小児期の肥満は成人期まで継続し、生活習慣病のリスクになるといえます。学校健診で指摘された場合は、今のうちに手を打っていきましょう。
参考文献:
富樫健二, 他. 小児悲観から聖人肥満へのキャリーオーバーー疫学的検証から, 肥満研究 26, 322-327, 2020