昨年、通常級において、支援を要する児は8.8%という報道がされました。
通常学級に在籍する児童生徒、8.8%が特別な支援必要 文科省調査 | 教育新聞 (kyobun.co.jp)
支援を要する=発達障害児ではありませんが、発達障害は小児科医にとって、アレルギー疾患や熱性痙攣と同様に日常的に診る機会があるといえます。
どの小児科医もある程度の対応ができる必要があります。
しかし、相談できる場所がない、という声をよく聞きます。
それでは、小児科医の発達障害の診療の実態はどうなのでしょうか・・?
今日は2019年に報告された熊本県での調査を紹介していきたいと思います。
熊本県での調査は、
著者:田中恭子, 中村公俊
タイトル:小児科医の発達障害診療の実態と意識調査
雑誌:日本小児科学会雑誌, 2019, 123:597~604
研究の概要ですが、アンケート調査です。熊本小児科学会に所属する医師374名を対象とし、アンケート調査票を郵送で送付しております。
回答があったのは、99名 (回収率26.5%) でした。
開業医は1/3でした。過去2年間の発達障害に関する講演の受講は約60%で、今後の研修の受講意向ありが86.9%で、比較的発達支援へのmotivationの高い医師に偏っている
可能性はあります。
では、小児科医はどれぐらい実際に発達支援の診療に関わっているのでしょうか?
半年間で発達障害の診療なしが約半数でした。その一方で、半年間で100名以上診療は
約16%でした。数少ない医師で対応しているのが現状となっております。なお、当院は
半年間でのべで約220名ほど対応しております。(のべでなければ80名ほど)
繰り返しになりますが、回答率が低く、また意識の高い人ほどこのような調査に協力する傾向がありますので、実際は、発達障害の診療無しである、医師の割合はもっと高いのではないかと思います。
では、診療していない医師は必要性を感じていないということでしょうか?
いいえ、そんなことではないようです。
下図は、一般小児科医として関わるべき内容についての回答ですが、「医学的知識を持っている」「発達障害特性に気付く」「保護者に気になる点を伝える」「専門医へ紹介する」の4項目はASD (自閉スペクトラム症), ADHD (注意欠如・多動症), SLD (限局性障害)それぞれについて80%以上の医師が必要と回答しておりました。
ここからは、発達障害の診療をしていない医師でも、発達支援診療の必要性を感じていることがうかがえるかと思います。
しかし、多くの小児科医は診療経験がなく、どうしていいのか分からない、というのが実際と思います。
そこで、私のような、一般小児科医とアレルギーが専門で、勤務医時代は発達支援の診療経験のなかった者が、開業医となってからどのように立ち上げたのか、という話はこのような先生方が、新たに発達支援診療にトライするにあたり参考になるのではないかと思いました。少しでも発達支援に関わる先生が増えることで、全国の支援を要するお子様・ご家族の一助となればという思いで、2022年2月に講演会をHenryさんと一緒に企画しました。
その時の内容を少しずつ紹介していきたいと思います。
次へ続く (不定期です)