食器洗い機専用洗剤の誤嚥に注意

日本小児科学会雑誌では、小児科医が共有したほうがよい事故情報が掲載されます。2021年1月号の学会誌からの報告を共有したいと思います。

以下、学会誌の内容を簡潔にまとめました。

日本小児科学会こどもの生活環境改善委員会. Injury Alert (傷害速報) No.98食器洗い機専用粉末洗剤の誤嚥による喉頭びらん, 日児誌2021: 125:104-106

<事故の概要>

1歳男児。シンクの上にあった、他の容器に移し替えられていた、食器洗い機専用粉末洗剤を倒し、粉末洗剤を頭からかぶり受傷した。直後に啼泣し、駆けつけた父が、口腔内の洗剤を除去している途中より、意識障害と呼吸困難をみとめ、救急搬送された。病院ではICU管理を要した。アルカリ性洗剤により、喉頭が損傷を受け、浮腫(むくみ)が発生し、気道が閉塞し、呼吸ができなくなり、低酸素状態となり、意識障害を起こしたと考えられた。

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http://bnct-cancer.com/shikkan/koutougan-intougan.phpより引用


<食器洗い機専用洗剤の誤嚥事故について>

・本報告の食器洗い機専用洗剤はアルカリ性(pH9~11)で,アルカリ剤として過酸化炭酸ナトリウム(酸素系漂白剤),炭酸ナトリウムが含まれており,これらが主たる有害作用の成分であり、細胞・組織を傷害する。

洗剤の誤飲の症状は,認められないか,軽症であることが多く,最もよく認められるのは嘔吐であり,続いて流涎,口腔内の泡,咳嗽などの症状である。しかし、ごく稀に,粘膜障害による上気道閉塞により,受傷から 1 時間以内に急激に呼吸状態が悪化することがあり注意が必要である。

(須藤 敏,與座朝義,大田重人,他.誤飲により喉頭浮腫を来たした 2 症例―アルカリ洗剤,熱いミ
ルク―.小児耳.2005; 26: 55-59.World Health Organization. Poisoning) 

 ・米国の中毒情報サーベイランスによれば、呼吸器症状を伴い人工呼吸管理を要した例は,全体の 0.1%程度で年間 4 例であった

( Davis MG, Casavant MJ, Spiller HA, et al. Pediatric Exposures to Laundry and Dishwasher Detergents in the United States: 2013-2014. Pediatrics. 2016; 137: e2015452) 

洗剤の容器移し替えは,誤飲や容器の変形破裂,有毒ガス発生などの事故につながる可能性があり危険である。

洗剤類のつめ替え等の安全性に関する調査を実施|東京都